2001年度(第8集)兵高教組歌句集

既発表作品

柏原高校 下岡伊津子

「ウルサイ」と言はれて黙る母の茶髪目守るしかなき三者面談

制服の正しき着方説くわれへ教卓の百合口空けてゐる

首筋に激しき秋陽受けながら無断早退の子に電話かく

しつかりともの言ふことに疲れたる唇ゆるめ聴く無伴奏チェロ

採点を終へて一息つくわれに朱の指サック天を示せり

力量の差を年齢のせゐにする愚か ほろほろ散る花林檎

雪のため授業流れて所在なき職員室によどむ明るさ

身に付きしことの一つに卒業を別れとはせぬ心の構へ

旅立ちを控へたる娘と音のなき外を見てゐる 元日の雨

空港へ向かふ車中に娘の語るリッキ−・マ−テ インの下積み時代

空港のパ−キング暗しマゼンタのス−ツケ−スがいびつに光る

到着を伝へくるメ−ル件名は「シャルル・ド・ゴ−ル空港も雨」

兵庫商業高校 吉田 利秋

完全に直して残るネジふたつ

恋かしらメガネしたまま顔洗う

第二希望は猫に生まれて屋根の上

斎場の母の煙と母の声

蝶止まり壊れた振り子動き出す

透明人間の肩と腰とにサロンパス

業務連絡私の怒り頂点です

怖いこと言っているのに人気者

巻き舌の椎名林檎を聴いている

止まらずに歩きましょうとある廊下

兵庫商業高校 高田 武明

踏みつぶす虫の来世を信じつつ

渋い茶を飲んで胃にくる恋のあと

ケ−ブルの車掌も拝む初日の出

筋論を通して落ちる砂時計

春一番私だけしか愛せない

御葬儀の看板もする花見かな

逢えたのにプリン不安で揺れ続け

並べたてた理由の中にない理由

夢のかけらなんだ皆も探してる

幸せに振れた振り子の戻る先

青陽東養護学校 北林  稔

発語なき児も響きよき語が気に入って「バンプキンだよ」で口をあけ食べる

トルコ支援を呼びかけて阪神震災の遺児も立つ三宮の街

「のはらのうた」の詩読みゆけば作業所の仲間ら弾みて声重ねきぬ

学齢期門閉ざされし障害者日曜日学び集いて二十二年

長田区の更地に時雨降って来て戻ってこられぬ人々思う

養護学校の書初め展に元気よく少年書けり「自力下校」

天に届けと「翼をください」灘の子ら歌いて泣きおり震災慰霊祭

名を呼べば来て鼻からの温水吾に飛ばしぬ象の諏訪子は

団伊玖麻語りつぎゆかんインデ イラに「ぞうさん」聞かせんとタクト振りしこと

養護学校の先生五百人歌いぬ「教科書ごり押しごめんです」