「ウルサイ」と言はれて黙る母の茶髪目守るしかなき三者面談
制服の正しき着方説くわれへ教卓の百合口空けてゐる
首筋に激しき秋陽受けながら無断早退の子に電話かく
しつかりともの言ふことに疲れたる唇ゆるめ聴く無伴奏チェロ
採点を終へて一息つくわれに朱の指サック天を示せり
力量の差を年齢のせゐにする愚か ほろほろ散る花林檎
雪のため授業流れて所在なき職員室によどむ明るさ
身に付きしことの一つに卒業を別れとはせぬ心の構へ
旅立ちを控へたる娘と音のなき外を見てゐる 元日の雨
空港へ向かふ車中に娘の語るリッキ−・マ−テ
インの下積み時代
空港のパ−キング暗しマゼンタのス−ツケ−スがいびつに光る
到着を伝へくるメ−ル件名は「シャルル・ド・ゴ−ル空港も雨」
発語なき児も響きよき語が気に入って「バンプキンだよ」で口をあけ食べる
トルコ支援を呼びかけて阪神震災の遺児も立つ三宮の街
「のはらのうた」の詩読みゆけば作業所の仲間ら弾みて声重ねきぬ
学齢期門閉ざされし障害者日曜日学び集いて二十二年
長田区の更地に時雨降って来て戻ってこられぬ人々思う
養護学校の書初め展に元気よく少年書けり「自力下校」
天に届けと「翼をください」灘の子ら歌いて泣きおり震災慰霊祭
名を呼べば来て鼻からの温水吾に飛ばしぬ象の諏訪子は
団伊玖麻語りつぎゆかんインデ
イラに「ぞうさん」聞かせんとタクト振りしこと
養護学校の先生五百人歌いぬ「教科書ごり押しごめんです」