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退職者作品
元龍野高校 藤原 明朗
春暁や谷それぞれに動くもの
梅雨の鍵そっと入れたる小引出
ドロ−スの匂ひやグラブに夏来る
甲子園青蔦ひたと葉を重ね
時計をば剥ぎけり灼くる日の果てに
玄米を研ぎし空瓶終戦日
秋蝉の鳴きをり大気鷲掴み
大いなる野武士の群れや山薄
校門や掲示あふれる文化祭
逆上がりの尻を押しけり鰯雲
秋雨やジャングルジムの鉄濡らし
地下鉄は人の匂ひやクリスマス
湧く水のあれば泥田に芹の生ふ
束の間の恋です電車のドアが開く
バイバイと携帯で別れることもある
暑いのにス−ツ着ている我がさだめ
終電に乗っかっていて冷えのくる
ス−パ−のなんやかんやにさくらんぼ
三月や家族離散がおそろしく
林檎篭象の眼大きくなったなった
元県立伊丹高校 富崎 文子
葉ぼたんや一枚板の檜門
巻貝に遠き海鳴り春の潮
鰆東風午報は沖へ響きをり
式場の外の日溜まり卒業歌
山ももの熟れて潮目の変りをり
著莪咲いて日本狼終焉地
まっ白な花屑を掃く梅雨晴間
南洲忌爪立てて剥ぐ青みかん
ビル街を抜けて山門冬紅葉
寒晴や火の見櫓は潮に錆び
元県立盲学校 足立 和喜
日の当たる順に顔出す葱坊主
移植ごて蚯蚓の影と蝶を載せ
散る花に洗車の人の苦い顔
里山に向かう二人や花吹雪
揚羽蝶日向と日陰ゆきもどり
メ−デ−やナ−スの胸にスロ−ガン
旅立ちの前に見た夢ミズバショウ
ホオズキを鳴らせとせがむ孫もなく
還暦の友夏山の主となる
「改革」をつまみ食いするビアホ−ル
雀の子軒から飛ぶは今日か明日
目覚めよと催促するか蝉時雨
夕立を連れて来てほし夏便り
日照り畑カボチャ顔見せ十あまり
洗面の手を止め黙祷す原爆忌
幼な子が手を振るごとき青菜の芽
アメリカの肝に命中テロの秋
元神戸市立神戸商業高校 石田 高子
帰省子と深き時間を共有す
よく来たと蝶をねぎらふ高層階
悔い多き一日なりしか栗を食む
蝉しぐれ職員室の談笑なつかしき
蒼穹や冥府観光終へ丘の上
悍しきニュ−ス追ひ来る秋三峡
「聖戦」「報復」哀しき言葉彼岸花
元神戸西高校 古川起与子
木枯らしのマストを攀づる素手素足
登檣礼寒きマストに血が通ふ
練習船送る家族の冬帽子
南風や乙女の統ぶる登檣礼
千姫の化粧櫓に花の客
船鉾の船足速く遠ざかる
鉾浴衣着慣れ少年笛を吹く
鉾町に近く蕪村の居宅阯
秋富士の裾に閃光日の出づる
かじかみて地震疵のこる遺作見る
元龍野実業高校 北 道子
震災のままの空地に蓼の花
学童の体験学習稲を刈る
祝ぎごとのうからに長き夜のありぬ
花柊散るも郵便何も来ず
幼等に手助けされて賀状書く
六年後も地震のあとあり雁渡る
春霰つぎはぎだらけの舗装路打つ
掬ひては花屑らす昼深し
母の日や母の享年・かに越へ
冷蔵庫のみたされあれば安らげり
元楠高校 結城 敏郎
頂に出迎うが如小鬼百合
雲海に切っ先浮かぶ槍穂高
林檎食み木曽恋うる女想いおり
待宵や雲上立山そびえけり
元神戸商業高校 田中 弘子
小判草女工の墓石濡れおり
一本杉と夕日を抱きし水張田
小紫陽花抜歯済むまで目を瞑る
父の村囲み若竹となりにけり
夏の山のび放だいに日の落ちぬ
出生地丹波と名乗れ去ぬつばめ
新涼やベットの父の小さかり
揚花火前足立てて犬しづか
山々の蝉の声容れ川流る
新案山子祖父の明治の羽織り着て
元市立飾磨高校 岸本 守
秋海棠俳句の心をシャッ−タ−に
雁流し幼き日々は鮮明に
雨水とも言えども手袋旅に出る
城もみじ空は青々壁白し
「人間」になる日やっと来る五月晴れ
なまこ壁似合う街あり万珠沙華
「かたばみ」の互紋求めて古城跡
処暑の朝てくてく散歩人増えり
黄梅や家主気取りで垂れ下がる
ひらひらと居間に舞ひ来し梅雨の蝶
元鈴蘭台高校 小西 明彦
大阪城攻めるが如し出初式
雁風呂も遠き日もみなけぶりけり
匂いまで焦がす目刺や妻の留守
ふらここを漕ぎて思案のゆるがざる
点滴の続く卯の花腐しかな
切れし尾をふりむきもせず蜥蜴去る
乗り換えてより単線の蝉しぐれ
秋雨の廓稲荷や西鶴忌
洛中を洛北へ雁渡りけり
遠目にも定かとなりて山装ふ
風もなく音もなくただ落葉舞う
年の瀬や句も生きかたもままならず
大阪の夜景ななめにラムネ飲む
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