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「県立高等学校長期構想検討委員会報告(素案)」についての兵高教組の見解

2007年02月01日


兵庫県高等学校教職員組合中央執行委員会

県教委が設置した県立高等学校長期構想検討委員会は、第一次実施計画の評価・検証と2009年〜2013年度の第二次実施計画の方向性を示す「報告(素案)」を、1月26日に発表しました。1月29日から2月19日までパブリックコメントを実施したうえで、最終報告をまとめることとなっています。私たちはこの「報告(素案)」は決して兵庫の高校教育をよくするものではなく、さらに多くの困難をもたらすものであると考えます。

 

1 「長期構想検討委員会」の性格について

まず、指摘しなければならないのは、「報告(素案)」をまとめた長期構想検討委員会が兵庫県の今後の高校教育制度のあり方を考えることにふさわしい組織であるかどうかです。

兵庫県における学校教育制度について、重要な問題については従来は学校教育審議会が開催され、そこで検討されてきました。これは条例に定められた審議会であり、県会各会派、市町代表や教職員組合代表も含めて、学校教育についてのさまざまな考え方を反映できる構成となっていました。私たちは第一次実施計画がもたらした問題の大きさからいっても、今後の高校教育のあり方については学校教育審議会で検討すべきであると主張し、その開催を求めてきました。

ところが、県教委事務局は私たちの要求に何らこたえることなく、お手盛りの委員会を招集し、高校教育のあり方についての検討を委ねたのです。事務局に都合のいい人選が行われていることはいうまでもありません。委員長の梶田叡一兵庫教育大学学長は、第一次実施計画策定時の委員として「15の春は泣かせればよい」と発言、高教組が罷免要求を出した人物であり、すべての子どもにゆきとどいた教育を求める県民のねがいとはかけ離れた考え方をもつ人物です。したがってこの委員会は、現在高校教育が直面している諸課題に対し、県民的な立場で真摯な検討を行うことができるような組織ではなく、そこから出された今回の報告素案は以下にみるように、県教委事務局がすすめている「改革」の追認とその延長線上のものとしかなっていません。

2 実態を無視した第一次実施計画の評価

第一次実施計画について「概ね評価できる」、「総合学科、単位制高校などの新しいタイプの学校は魅力ある学校となっており、学びたいことが学べる学校となっている」、「新しい選抜制度(複数志願制)は、当初の目的が概ね達成されている」と評価しています。

その根拠となっているのは、いくつかのアンケート結果です。ところが教職員のアンケートは校長の意見のみを集約しています。「目的を持って入学してきた生徒が増えたか」、「「教職員の協力体制はできたか」などと質問していますが、日々生徒と接している一般教職員の直接の意見はまったく反映されていません。そこではひとりの教員が6〜7種類もの科目を担当するなど、超多忙化と慢性的な超過勤務のなかでやっと支えられているという実態はまったく省みられていません。  複数志願制度について「学びたいことが学べる学校への志願」や「目的意識を持った幅広い学校選択が進んでいる」と評価しています。しかし、その根拠としている生徒むけアンケートは、受検校決定理由の選択肢に「中学校での成績で」を設けていないなど、極めて恣意的なものです。高教組神戸県立支部が昨年度末神戸第3学区の生徒にたいして行った調査では、受検校を決定する際、「高校序列」を意識した生徒はあわせて77%あり、ほとんどの生徒が、それを受検校決定の要因としているのです。また、学校間格差についても「素案」がいうような、複数志願制度によって「解消されつつある」より、「広がった」と感じている生徒が多くなっているのです。さらに「複雑入試で、塾まかせにならざるをえない」といった中学校の進路指導の実態がまったく反映されていません。今後、総合選抜学区への導入強行によって起こるであろう「高校序列」化による混乱は視野に入っていません。区域が広大な姫路・福崎学区では「その他校希望」が1%にも満たず、県教委がいう「セイフティネット」としての機能も果たしていません。その点について何ら真摯な検討もありません。

定時制高校については統廃合を進めた結果、志願者が定員を超える学校もでています。高校教育から排除される中卒生が生まれている現状をどうするのかという問題にも触れていません。

3 「特色化」は礼賛するものの「総合学科」「新しい専門高校」の新規設置せず

多様化をすすめることをうたいながら、第一次実施計画の象徴であった総合学科は「妥当な配置」、新しい専門高校は「設置の必要性は少ない」としています。その拡大は中止に追い込まれただけでなく、「定員割れが起きた学校」があるなどとして、定着に必死であり、学校としての「特色化」の行き詰まりが明らかになっています。その一方で全日制普通科に単位制高校や、「特色ある類型の設置」、「類型のコース化」をさらに増やし、特色化をすすめようとしています。

要は金をかけずに多様化を進め、生徒には系統性のないカリキュラムを押しつけ、主権者として必要な学力を保障しないまま、「自分で選択した」という自己責任をかぶせ、教職員にはさらなる多忙化を強いるものです。

4 改悪教育基本法の具体化=強圧的な教職員に対する特色化のおしつけを宣言

重大な問題は、「魅力ある」教育活動の推進について、それが不十分である責任をもっぱら教職員に押しつけていることです。「特色化を推進する上で教職員一人一人が各学校の特色化の推進を自分のこととして受け止め、自らの資質の向上を図るよう、研修のいっそうの充実などを通じて教職員の意識改革を進めることが望ましい」と、教職員の意識を問題にし、上から無理やり押しつけた特色化推進のために教職員の「意識改革」を求め、強制的に従わせようとするところに今回の報告の改悪教育基本法の具体化ともいうべき危険な性格があらわれています。

いま、教職員の精神疾患による休職が急増していますが「素案」の内容では、これをますます増大させる結果になることは目に見えています。

5 まとまらない学区拡大、しかし複数志願の「全県導入」を突破口に

委員会審議のなかでは学区拡大について議論されています。そのなかで現在の16学区を7学区程度に統合し、大学区化をおしすすめる意見が出されています。さすがにこれには反対意見が続出し、今回、正面から提案することはできていません。この背景には、「競争の教育に反対」、「地域の子どもが地域の高校に通える制度を」という多くの県民のねがいと運動が反映しています。にもかかわらず「今後その望ましい在り方を検討していく必要」と学区拡大に固執しています。それは県教委事務局にフリーハンドを与え、学区拡大の方針を具体化できるようにするためです。学区拡大によっていっそう競争を激化させ、スーパーエリート校を生みだし、そこには重点的に予算を配分、その他の高校は安あがりの「キャリア教育」によって大量の非正規労働者を養成できるようにする、これがねらいです。

「複数志願制」と「特色選抜」をくみあわせた「新しい選抜制度」については、「全県的に導入」する方向をうちだしています。「新しい選抜制度を導入するに際して、学校数の少ない学区では近隣学区との統合を視野に入れ検討」と複数志願制導入を学区拡大の突破口にしようとしています。

 

6 地域の声を無視できないが、統廃合推進方針には固執

高校統廃合については、第1次実施計画の考え方を基本として、これを推進する方向を示しています。同時に「地域の高校を守れ」の声が無視できず、「小規模校や分校における活性化方策を地域とも連携して十分検討した上で、存続するか、統合または募集停止するかについて検討することが望ましい」ともいっています。そこには各地で続けられてきている高校統廃合反対の取り組みが反映しています。また、地域の高校存続のため「連携型中高一貫教育校」の検討がいわれています。この内容は明らかではありませんが、中高一貫校についての理念的な検討が何らなされていないところからみても、高校を存続にむけた地域の声がおさえられない場合には、中高ひとまとめで安あがりにすまそうという姿勢がうかがえます。私たちは中高一貫教育について一概に否定するものではありませんが、単に安あがりのためというのであれば、あまりにも安易であると言わざるをえません。

重大な問題は、二部制も含めて多部制単位制高校の設置を検討していることと引き替えに「学校数、生徒数の多い地域について、複数の定時制高校の募集停止を視野に入れつつ検討」と、都市部における定時制高校の廃校を打ち出していることです。全日制高校についても「適正規模」を口実に、学校数の多い地域については容赦なく統廃合を進める方針です。第1次実施計画で定められた全日制高校で6〜8学級(普通科)を適正規模とする考え方は何ら根拠のあるものではありません。全国的にもこれを下回る規模の学校において教職員と生徒とのきめ細かい人間関係をいかした教育活動が行われています。学級数の減少に従って機械的に教職員定数を削減し、多忙化を押しつけている教育行政に問題があるのです。ここでもカネの論理を優先させる教育委員会に追随する検討委員会の姿勢があらわれています。

7 生徒・保護者・教職員・地域の共同で兵庫の高校教育の創造を

以上のように、今回の報告(素案)は、競争の教育の推進、「特色化」の名の下での差別と選別の教育の徹底、高校統廃合による安あがりの教育、教職員の統制強化をその内容としています。そして素案のもうひとつの特徴は、いま問題になっている不登校、いじめ、学力低下、未履修など受験教育による歪み、授業料減免者や滞納者、経済的理由で修学旅行に参加できない貧困化の広がりなどの教育をめぐって解決すべき課題について正面からの検討をまったく行っていないことです。それらを放置して「改革」の結果が「概ね評価できる」などとするのは、およそまじめに高校教育のあり方を検討しようという意欲も能力も持たないものであると言わざるをえません。

これでは、兵庫の高校教育はよくなるどころか、ますます生徒・県民の願いとかけ離れたものとなっていきます。兵庫の高校教育をよくするためには私たちは次の点が必要であると考えています。

第1に、30人学級の実現をはじめとする教育条件の整備をすすめ、すべての生徒にゆきとどいた教育を保障することです。

第2に、格差と貧困がひろがるなかで高校生の修学保障の施策を充実させることです。授業料減免枠の拡大、奨学金の充実、学校行事への参加費補助制度などが緊急の課題です。高額の通学費の負担を強いる学区の拡大や高校間格差を拡大するような政策をとってはなりません。

第3に、地域の高校に安心して通える総合選抜制、小学区制を拡大することです。

第4に、上からのおしつけによる「特色化」ではなく、生徒参加・保護者共同の地域にねざした学校づくりを進めることこそ重要です。学校の特色はそのなかで自ずからうまれていくものです。

第5に、地域の高校のあり方は、地元自治体・地域住民の声を聞いて行うことです。県と市町は上下関係ではなく、対等な立場にあります。市・町はその地域の住民の教育に大きな責任をもっています。その点で県教委は一方的な統廃合、学校改編を行うのではなく、市・町にかかわる問題については、対等の立場で協議を行うことが必要です。

第6に、兵庫県全体の教育のあり方については、正規の学校教育審議会を開催して議論すべきです。県教委事務局が恣意的に構成した長期構想検討委員会の報告は学校教育審議会の検討資料にとどめるべきであり、事務局が実施計画を策定するための根拠とすべきものではありません。

私たちは、生徒・保護者・地域住民・自治体のみなさんと対話を進め、兵庫の高校教育をまもるためにこれからもねばり強く奮闘するものです。


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