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研修問題を考える(3)/企業研修の本当の目的は何か

2003年06月25日


10年研修、英語研修の背景とその狙いを明らかにしてきましたが、研修問題の最後に企業研修についてその本当の目的は何かをみていきたいと思います。

国立大学の行政法人化と企業の論理

企業の論理(=金儲け最優先の考え方)が最も乱暴な形で現れたのが国立大学の行政法人化です。なぜ財界が国立大学の行政法人化をめざすのかを率直に述べた文書に「科学技術戦略の変革に向けて」(2001年6月 経団連)、「国際競争力強化に向けた我が国の産学連携の推進」(2001年10月 経団連)などがあります。「変革に向けて」では、「産学連携の差が(米国との)競争力格差の原因の1つとなっている」ことが強調されています。その上で、産学連携を強化するためには「企業との契約形態、教官・職員の雇用形態、学部・学科、事務局体制などの組織編成、トップのリーダーシップの発揮などの面で、大学に対して米国並みの自由度を付与することが不可欠である。これらを総合的に実現するため、国立大学の独立行政法人化を急ぎ、非公務員型を導入する必要がある」としています。 次に、「産学連携の推進」では、「産学連携の最大の障害は、大学側において、企業との連携(共同・受託研究、特許の取得、ベンチャーの企業等)が教授や研究者の評価の対象となることが少ない点である」との認識が示されます。そして、「大学の教員・研究者の業績評価において、従来の論文中心の評価を改め…産学連携等も評価する」、「実用化につながる研究分野では、産学連携による資金が研究費の必要不可欠な構成要素となるような配分を工夫する」、「教授等の給与を固定給+成果給」にすることを求めているのです。

要するに、現在の国立大学を行政法人化(=民営化)し、教官・職員を民間人にすれば大学での研究成果を企業は自由に金で買える、それをためらうような研究者は評価せず給料も下げればよいというわけです。これほど露骨な大学教育へ介入、企業の論理の持ち込みを主張した文書は過去に例がありません。

企業と大学教職員、学生との関わり

財界は、産学連携を進めるためには大学と企業との人的交流が不可欠であるとの認識を持っています。前出の「産学連携の推進」では、「大学側において企業ニーズを把握している教授や民間出身の教授がいたことが、産学連携がスムーズに進んだ成功要因である」と率直に語った後に、「民間から大学への出向形式も有効な方法」、「教授・助教授層の企業の研究所で研究を行う共同研究等の充実」、「大学院生に対する早い段階でのインターンシップの拡充」などを具体的に提言しています。そして、「例えば、産学連携担当副学長を置くなど、強いリーダーシップの下で、外部に対する学内の協力体制を構築することが重要である」と締めくくっているのです。

以上のように、財界は、産学連携、すなわち、研究成果の活用、共同研究開発、そして、企業の研究開発依頼等が大学(院)との間で自由に行えるようにすることが競争力強化に不可欠であるとしています。そして、その実現のためには、研究者や学生に「企業につくすことが当然」との意識を植えつけるがキーポイントであると考えているのです。

高校での企業研修の目的は

では、高校での企業研修をどのように考えればよいのでしょう。研究成果等の取り扱いを除けば高校での企業研修も大学と企業との関係と基本的には同様といえます。財界の目的は、第一に、平和や民主主義、個人の尊厳や人格の完成など普遍性を持った学校教育の目的の中に、「企業の利潤追求への協力(私的な利益追求)」という全く異質な内容を企業研修を通して公然と持ち込むことにあります。第二に、教育の原理ではなく、利潤追求という企業の論理を積極的に受け入れる教職員を育てることにあります。この2つの目的は、大学であれ、高校、小中学校であれ全く同じです。

「若者が自立できる日本へ」(2003年4月 経済同友会)は、大学と企業との連携のあり方が「国立大学行政法人化法」で目途が立ったのを踏まえ、今度は、いよいよ、高校、小中学校と企業との本格的な「産学連携」のあり方を模索した財界の文書といえます。同文書の「教員研修の積極的受け入れ」の項では「教員の資質向上に寄与し、変化の激しい社会環境や、企業活動への理解を促進するため、企業は教員の『長期社会体験研修』の受け入れに積極的に協力するとともに、企業人と教職員の人事交流、人材交流を促進する」と記されています。この文章からも企業研修の目的が「企業への協力」「利潤追求への協力」を当然視する教職員を育てることにあることは明らかです。財界にとって企業研修を通して教職員の意識を変えることは大変重要な長期戦略なのです。

なぜ教育委員会は企業に研修を丸投げするのか

教育委員会は、企業研修については企業に丸投げする形式を取っています。その理由は、教育委員会が直接行ったのでは、私的な利益追求のための経営理念や手法の習得を目的とする企業研修は教特法の精神に反するとの批判が出るからです。そのため「社会的教養」「幅広い社会認識」を身に付けさせるなどと適当な理由をつけ、後は、丸投げし企業にお任せ、すなわち、企業のやりたい放題にできる形式を取っているのです。もし、教育委員会が、企業に対して「教育基本法の理念に基づき行うこと」という注文をつければ企業研修を受け入れる企業はゼロとなるでしょう。企業が一定の負担を覚悟してでも教職員の研修を受け入れるには意味があるのです。企業丸投げの企業研修に反対する取り組みは、憲法・教育基本法に基づく学校教育を守り発展させるうえで大変重要となっています。


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