白木屋分会物語
3人になってもがんばった!
和解の解決金は38億円!

表題を見て想像するのは、筋金入りのひげもじゃ「闘士」。でも、実際は写真の通りの若い女性3人です。
いつもの涙が笑顔に変わった日
「辞めざるをえなかった仲間たちに、この勝利 報告したい」 20代の女性たちが大きな会社に勝利しました。相手は「白木屋(しろきや)」などで有名な居酒屋業界最大手・モンテローザ(大神輝博社長、本社・東京・武蔵野市、従業員約2万人)。ひどい労働条件を改善させようと、労働組合をつくり、一時は3人になりながらもたたかってきました。東京西部一般労働組合白木屋分会は9月6日、会社と和解協定を結び、労働組合と全従業員への謝罪、未払い残業代の支払い、労働条件の大幅な改善を約束させました。
たたかいは3年余におよびました。7回開いた集会では、訴えの最後に必ず泣いていた三人。有働昌子さん(27)、兎子尾(としお)美香さん(25)、荒木好江さん(28)です。
勝利和解したこの日、涙はありませんでした。紅潮したほほに、自然と笑みが浮かびます。「一人が辞めたいというと、別のだれかが『がんばろう』っていう。三人同時に辞めたいときはなかったね。だれも欠けずに解決を迎えられてうれしい」と三人でにっこり。
当初70人いた組合員が3人に
「『辞めたい』って十回はいったかな」という有働さん。一番苦しいときに分会長を引き受けました。「会社のいやがらせで、たくさんの仲間が辞めざるを得なかった。当初70人だった組合員は3人まで減りました。辞めていった仲間たちの悔しさは忘れることがありません。今日の勝利を、その仲間たちに報告したい」
こんな働かせ方はひどすぎる!
白木屋分会が結成されたのは1998年5月。彼女たちの思いは「こんな働かせ方はひどすぎる」という怒りでした。回覧板で月一万、二万円の賃金カットを通告。有給休暇は二週間前に申請しなければ認めない。欠勤一回で八万円カット。電車が遅れて一分遅刻しても一万円カット。
組合員にきばをむく会社
「働きやすい職場」を求めた組合に、会社はきばをむきました。組合員にたいする突然の部署異動や配転、過重な仕事の押しつけ、「組合員は昇格できない」という脅し……。
経理課にいた兎子尾さんも、いやがらせを受けました。ほかの人は20〜40店舗を受け持つのにたいし、兎子尾さんは60店舗。「毎朝2時間前に出社してサービス残業(ただ働き)し、家にも持ち帰る。『負けるもんか』の一心でした」 その兎子尾さんに、今度は「明日から新宿・歌舞伎町の店舗で夜8時から翌朝5時まで働くように」と突然の配転辞令が出ました。どうしてこんな目にあうのか、たたかっても無駄なのではないか。兎子尾さんの心は揺れました。「辞めたい」という彼女を励ましたのが有働さんでした。
「何なんだこの会社は。ここで辞めたら会社の思い通りにされてしまう。傷ついて辞めていく仲間をもう出したくない。ふんばらなきゃ、がんばろうよ、と話しました」 翌日、二人は辞令を突き返しました。
もう一人の仲間、荒木さんは、「いやがらせがひどかったころ、私は組合員であることを隠していた。そのことが悔やまれて、だからこそ最後までがんばろうと思ったんです」と控えめに話します。荒木さんがたたかうことを決意したのは、おばあさんが亡くなったときでした。「忌引休暇すら認められず、欠勤として賃金カットされました。ひどすぎる」 三人で分担して全国の店舗を回り、労働条件の改善と未払いの残業代を払うよう求めていることを、一生懸命に話しました。問い合わせもくるようになりました。
広がった協力の和
「店舗は本社よりひどいと分かった。一日十数時間も働かされ、一方的な転勤が年四回あるなんてざらなんです。小さい子を抱えた奥さんが『夫が転勤になった。どうしよう』と電話をかけてくる。なんとかしなきゃと必死で訴えました」と荒木さん。
三人の呼びかけに、新たに120人が組合に加入しました。休憩室も 店舗の社員で真っ先に声を上げたのが、横須賀1号店の店舗責任者だった小岩和馬さん(33)です。「缶詰め状態で働かされ、残業代は半分。社長の私腹をこやすために働かされていた。辞めようと思っていた矢先に、彼女たちの活動を知った。汚いやり方は許せない。これ以上苦しむ人が出ないように、力になりたかった」。従業員の勤務状況や賃金などの資料を組合に提供しました。
成果も生まれました。残業代未払い分が一部支払われ、どこにもなかった休憩室が、9割の店舗で実現しました。(ことし8月末現在) 「職場も年齢も違う人たちが応援してくれるなんて思わなかった。毎週水曜日にやりつづけた駅頭宣伝にもずっときてくれたんです」「集会でマイクを握ると、会場からがんばれ、がんばれって聞こえてくる。それを聞くと、どうしても涙が出てきて……」と三人。
結婚出産 兎子尾さんは昨年結婚し、十月末に出産。「妊娠したとき、迷惑になるだけじゃないかと悩みました。二人が『おめでとう。休んでていいから、辞めずにがんばろう』といってくれて、本当にうれしかった。彼も『ここまできたんだから、やれるところまでやろうよ』って」 荒木さんの言葉が心に残りました。
当たり前のことを要求しただけ
「私たちは特別なことをしたんじゃありません。ひどいことをひどいといい、当たり前のことを要求してきた。労働者の権利や組合の大切さも学びました。会社のひどいやり方に苦しんだり、悩んだりしている若い人たちに、組合のことをもっと知ってほしい。泣き寝入りしないでがんばろうよ、っていいたいです」
和解協定の内容
▽会社の陳謝 不当配転や残業代未払いで経済的、精神的に損害を与えたことなどを列記して陳謝する。全従業員に社長が陳謝する。
▽労働条件の改善 すべての店舗に休憩室を設置する。異動は事前に通告し、移転を伴う異動の場合は、本人と家族の旅費と転居費用を会社が負担する。個人の労働時間、残業区分別単価などを給与明細とともに毎月交付する。
▽未払い賃金の支払い 在職者退職者全員に、未払い残業代を過去二年間にさかのぼって支払う(組合推計で約21億円。これまでに支払われた分を含めると38億円)。
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