03賃金確定闘争の背景とその成果
日本について=大競争時代(誰のための?)
2大政党選挙とかマニフェスト選挙とか言われて、本来の争点をぼやけさせたまま行われた秋の衆議院選挙の結果、反国民的な政治がさらに勢いを得て押し進められようとしている。2大政党と呼ばれる体制は、財界(経済同友会・日本経団連=大企業が政策を政府に指図する機関)が、どちらに転んでも自分の要求を政治に反映させるために要請したものだ。自民党だけではなく、民主党も濃密に財界とコンタクトを取ってマニフェストに反映させた結果、このふたつの政党間に大きな違いが無くなってしまった。どちらも、大企業の法人税をさらに減税し、その穴埋めとして(社会福祉という名目として)消費税を増税し、年金財源を法人税外に(つまり受益者負担という名目で、貧困化しつつある国民から強制徴収することに)求め、さらに9条をターゲットにした憲法改悪を盛り込んだ。
既に、どちらも「日本国民のための政党」であることを止め、グローバル化して日本国民から遊離した大企業が21世紀初頭の「世界の富の収奪戦」の時代を生き残るための、財界後方支援組織と化している。教育基本法を改悪するための中教審最終答申(2003/3/20)に記載された「大競争の時代」とはそういうことだ。その大競争時代を大企業が生き延びるため(より大きな富を途上国から搾取する競争に勝つため)、銃後の国民である私たちは、「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び」ということが強要されている。
社会福祉に充てられるはずの「消費税増税」が、実は法人税減税の穴埋めにもなっていないということ、それだけではなく、大企業様の御威光に逆らえずに、社会福祉の「個人的な領域」と認定されたあらゆるものが保護の対象から外されてきた。教育、医療、老人、介護……社会福祉とは、「自己責任」の名でそれぞれの「力量」に応じて個々人が自分を守ることだった、などと、一体誰がそんな暴論に納得しているだろうか。
しかし、選挙の結果は、これらの国民レベルでの追認(GOサイン)に終わってしまった。投票結果をどう議席に反映するか、という選挙区制の矛盾も大きな問題だったとしても、国民は、大企業達の思惑通りの結果を出したのだ。「さらにこの改革を押し進めよ」と。
世界について=富の集中化
このような現象は、日本だけに止まらない。経済のグローバル化という荒波によって、様々な国の国民が深く傷ついている。途上国は決して富が分配されることがなく、先進国だけが、しかもそのなかでもほんの一部だけが巨大な富を蓄積する。イラク戦争が端的に表現しているように、世界は富める者のために再構築されつつある(今、富は全世界規模で集中化(*)している。それが、中教審の言う「大競争時代」なのだ)。
世界は今、急激にバランスを崩しかけている。最強を自認するアメリカが世界を引きずり回し、それに追随する大企業と国々が、(いやいやながらも?)その崩れ始めた世界の利権にありつこうと群がっている。ブッシュは、実戦用小型核兵器開発に署名した。世界を自分の膝元に屈服させるために。ラムズフェルドは、宇宙空間に原子炉を打ち上げ、巨大な実戦用兵器庫を地球軌道に配備しようとしている。
(*) 統計(『世界がもし100人の村だったらA』から:Herald Tribune. 数値は、富の分配率 % )
| 富の偏在 |  1960年  |  1970年  |  1980年  |  1989年  |  1998年  |
| 低所得20%の人々 | 2.3 | 2.3 | 1.7 | 1.4 | 1.2 |
| 中所得60%の人々 | 27.5 | 23.6 | 22.0 | 15.9 | 9.8 |
| 高所得20%の人々 | 70.2 | 73.9 | 76.3 | 82.7 | 89.0 |
何ができるのか
そういうパワーゲームと化した政治に振り回されている私たちは、諦めと怒りとの渦のなかでズタズタに引き裂かれながら明日を見失いかけている。私たち大人だけではない、子どもたちの未来は一体どうなっているのだろう? けれど、決してこの世界収奪は持続しない。この世界収奪の意図は、この世界そのものの価値や文化や社会や人々を崩してしまう。このままでは、必ず世界のバランスは見るも無惨に大崩壊する。
私たちには何も出来ないのだろうか? 成り行きを見守る以外、どうにもならないのだろうか? 私たち個人は、個人のできることの範囲を超えては何も出来ないかもしれない。でも、だから、個人でできることを、何とかやっていくしかないのだ。まずは、自分自身を守ること、だ。私たちが教職員なら、私たちの学校への攻撃と、私たちの生徒への攻撃と、私たちの生活への攻撃と……、そういう攻撃に対して、跳ね返す力を育て、連帯しよう。そして、神戸市を動かそう。兵庫県に喰い入って行こう。日本という国に参加しよう。
ひとつひとつは小さな声でも、私たちは今回の03確定闘争で、県立学校関係教職員のほぼ半数に近い 4,483筆の署名を積み上げたではないか。不利益遡及提訴の原告団にも 1,104名の名を連ねたではないか。有事法制成立の瀬戸際まで、私たちは小学生からの声も含めて大量の抗議を首相官邸へ届けたではないか。それが、私たちのなし得ることの一例だ。それが、私たちの「力」であると信じよう。「怒りを絶やしてはダメだ」ということ、それが、私たち大人の義務だ。世界を、私たちで終わらせてはならない。子どもたちにどんな世界を受け渡していくのか、それを第一に考えよう。
そういう背景のなかで、私たち兵庫県教職員の03確定闘争はたたかわれた。
どういう交渉だったか、振り返ってみよう。
まず、国(政府)の既定路線として、財界ニーズによる国民サービスの切り捨てがあり、地方自治体への有形無形の締め付けがある。兵庫県は、国に追随して県行革を押し進め、その過程で、国と同じく大型公共事業を押し進めて県内大企業を潤す一方で、県民への福祉や安全を、国に準じて切り捨てていった。公務員への賃金抑制攻撃は、民間への波及効果が大きく、悪循環の中で国も県も景気は活気を失ってゆく。消費が萎むなかで、大企業は、リストラが奨励されてでもいるかのように(実際、リストラを行った企業は「私どもではこんなに血を流してまで経営努力をしています」と胸を張っていた。まるで、アメリカ企業のようだ)、従業員を様々な口実で解雇する。そういう「行革」が進行している。
そういう中で、県は、基本賃金に関して二重帳簿を作成し、「民間より高い架空の賃金」の民間との差額を、「民間より低い現実の賃金」から削減する、しかも既に支払い済みの4月分の給料に遡って削減する、という詐欺的暴挙を2年続けて行おうとしている。その理由が県の失政による財政難で、それを職員にしわ寄せしようという不当なものだ。
「不利益遡及断念」と「12月昇給延伸の復元」ができなかったことについて。
(以下、2003.11.27付中執資料≪2003年度確定闘争の成果と今後の課題≫の要約他)
根本的には、国、財界、県をあげた労働者の賃金切り下げ、県行革路線との対決で力関係を逆転させるに至っていないこと、すなわち、全教職員・県民の世論形成が十分でないことである。県レベルで言えば、「県行革反対」での県民的な全労働者と結びついた取り組みがまだ弱く、県当局を十分には追いつめていないことである。第二には、私たち自身の職場での署名集約の難しさである。ほんの少数の組合員が職場の全員に頭を下げて署名を集めることが、最近の組合員数の減少と多忙化の中で、ますます困難になってきている。そんななかで、ほぼ8割9割の署名を集められた分会がたくさんあったことによって、全体で5000に近い署名が集まり、独自の要求については県の大幅な譲歩を勝ち取ることができた。
03確定闘争の成果について。
・賃金・手当について……通勤手当の最高支給限度額上乗せ。技能労務職給料表の一部上乗せ。育児休業3年目の経済支援策の拡大。臨時的任用者の給与決定における改善など。
・勤務条件について……子の看護休暇の時間単位での取得。リフレッシュ休暇に向けての足がかり。従組の定年制交渉での有利な条件での再任用制度。55歳昇給停止断念。退職時特昇の削減断念。
・超過勤務問題について……適正な勤務時間管理を求める通知を校長宛に発するとの回答。仕事量を減らすために何ができるかを考える、という回答。県教委各課の枠を超えた協議についての前向きの姿勢。
・臨時教職員問題について……計画的に正規採用者を増やしていく努力を約束。2年を超えて同一校勤務が可能であることの再確認。
成果の理由について。
・高教組の呼びかけによって、不利益遡及に対する1104名もの教職員による提訴と、それに続く県職107名の提訴。違憲・違法は許さない、という大きな運動になったこと。
・「私たちの8大要求」署名に、早い段階で5000名近い署名が集まったこと。
・「財政難による賃金抑制」という口実は、無駄な公共事業の継続などの、借金を雪だるま式に膨らませての大企業奉仕という失政を我々に押し付けるものであること、県行革の基本方針にすら外れていることを明らかにし、確認させたこと。
・勤務時間についての粘り強い取り組み、臨時教職員へのアンケートなど、地道な活動。
・民間と公務員共同の取り組みが確実に始まったこと。
・全教職員配布の各種のニュース。
今後の課題について。
・確定の成果について、「たたかえば前進できる」と広く伝える。
・超勤問題、臨時教職員の待遇改善の問題で、地道に前進する。
・今年度末で見直される県行革について、学習と批判を広げていく。
・全ての職場で、高教組への加入を勧めていく。
・不利益遡及闘争を前進させ、県の違憲・違法性を明らかにしていく。
県高支部ニュースNo.28より