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イラク派兵をめぐって(神戸県立支部)

2004年02月03日


イラク派兵をめぐって

1 自衛隊イラク派兵の危険な前提

 何故、どう考えてもあり得ないはずの「自衛隊イラク派遣」が、こんなにも簡単に既成事実となってしまうのか。
 1/31の未明、しかも与党のみという異様な舞台設定でイラク派遣国会承認は衆議院を通過した。
 当初の道義的色彩がすべて瓦解してしまったのに、それでもアメリカとの約束を守ることに汲々となっている現政権の姿があまりにも情けなく見える。しかし……、
 彼等の本当の狙いはその向こうにある。日本だけではなく、世界にとっても重大な結果へと道を開こうとしているのだ。憲法改定への道を。


 『イラクの小さな橋を渡って』の著者である池澤夏樹が書いている。

 もともと自衛隊は国土を守るのが任務だったはずです。
それが今回、国益を守ることになった。
 ここで国土と国益の違いはとても大きい。決定的に大きいのです。
なぜならば、国土は膨らまないけれど、国益は欲望のままにいくらでも膨らむから。
 国土は国境によって限定されていますが、国益は無限です。
 この無限の欲望に自衛隊という軍隊(*)を用いてしまうと、
日本国の武力行使には歯止めがなくなる。
世界中どこでも、国益にかなう限り、アメリカが認める限り、
日本軍はしたいことができる。(「The Age of Pandora 005」2004.01.30より)

   (*)自衛隊は実質的にはもう日本軍です。運用において自衛を旨としていたから自衛隊だったのであって、世界中どこへでも行ける武装組織は軍と呼ぶしかない。


 米CIA特別顧問として、イラクの大量破壊兵器開発の証拠探しのために6ヶ月間、1400人の調査部隊を率いてきたデビッド・ケイ氏が調査を終了し、「イラクにはそんなものは無かった」と報告した。
 アルカイダとフセインとの関係も無かったし、大量破壊兵器も無かった。ブッシュのイラク潰しは、イラク復興シナリオとともに、9.11よりずっと以前から議論されていた。9.11は、彼に絶好の口実を与えただけだ。要するに、イラク戦争はメチャメチャな戦争だったということが白日の下に曝された。日本と米国との、自衛隊のイラク派遣をめぐる約束も、その基盤を失った。
 イラク復興支援とは、左手で破壊したものを、右手で(利益が自分の所に回ってくるように)組み直すことであり、イラク戦争とは、右手で利益を得るために左手で破壊することだった。「破壊と復興」という両者は、始めからペアだったのだ。
 そして今や、「復興のための米軍支援の各国の軍隊」とは、「利益享受有志国家の証として差し出された人質軍隊」でもあることが明らかになっている。各新聞の、あからさまには書かれない「暗黙の了解」として、それぞれの論調の通奏低音になっている。


 「自衛隊」が政局に翻弄される犠牲者であろうとなかろうと、
 サマワの人々からどんな歓迎があろうとなかろうと、
 そして、イラクがたとえ安全であろうとなかろうと、
私たちは叫ばなければならない。
 決して「無事任務を果たして帰ってこい」ではなく、
 米兵士や自衛隊の家族と共に、
 ブッシュ大統領や小泉首相に向かって、
Bring Them Home NOW!!! (ただちに連れ戻せ!!!)


2 変わってゆく空気

 山本七平に、『空気の研究』という本がある。
 「1930年代から1940年代にかけて、何故日本の世論やマスコミはズルズルと太平洋戦争へと染まってしまったのか」ということを、
 日本人特有の「その場の雰囲気」「言っても始まらない」「自分ひとりでは何にもできない」という、その場その場を支配する「空気」に国民全体が流され、批判的な意見が異端となって消されていったのだ、
と分析している。それがそのまま、日本的管理主義=無責任体制となる。
 それは、よく言われる「日本的集団主義」「日本的ナァナァ主義」「日本的没個性主義」とも通じる。私たちにとって、非常によくわかる話だ。
 その日本特有の「空気」と「知らない間に積み重なっている既成事実」とが合わさって、日本の世論もマスコミも、太平洋戦争(15年戦争)に飲み込まれ、大本営発表という徹底した報道管理、責任の所在が曖昧なまま失われてしまう徹底した無責任体制が生まれた。

 そして今、まさに時代をなぞるように、防衛庁が、報道管制を敷こうと、「お願い」をしている。


積み重なる既成事実に飲み込まれる世論

自衛隊派遣についての世論調査
 日本テレビの二つの調査、
昨年十二月の世論調査(左)と、先遣隊派遣後の世論調査(右)
を比べると、たった1ヶ月の間に9ポイントの人たちが反対から賛成へと変わったことがわかる。
この調査結果が鮮明に語るのは、小泉政権が積み上げる「事実」の国民への絶大な影響力の大きさ、つまり、私たちが、いかに小泉政権のさじ加減に飲み込まれているか、ということだ。クーデターは、私たちの精神の自由を食い破っている。


『黄色いハンカチ』キャンペーン

 たとえば、陸自派遣のお膝元、北海道旭川では、
「行ってしまった自衛隊を無かったことにすることはできない、行った以上は、気をつけて無事に帰ってきて欲しい」 と、『黄色いハンカチ』運動が始まり、全国規模のキャンペーンへと拡がっている。
 けれど、ここに見える「既成事実の動かし難さ」こそが、小泉政権が積み重ねてきたクーデターの恐ろしさではないのか。
 主催者は、「私たちには政治的な意図は全くありません」と言う。そうかもしれない、でも、黄色いハンカチの陰で、小泉首相も石破防衛庁長官も、にこやかにVサインをしていることだろう。「無事に帰れ」とは、「行ってこい」ということなのだ。小泉政権が言う「温かく見守って欲しい」という「銃後の勤め」がこれなのだ。

編集後記
★先日、イラク戦争の授業で、13歳の少女の平和の訴えと地雷とDUの資料とを読ませた。★感想を読みながら、子どもたちの疑問に私も答えられないままため息をついた。「人が傷ついたり死んだりするかもしれないのに、なぜそんな爆弾を作るの?」「なぜ戦争するの?」★解説なんかどうでもいい。★人類が生き延びるに値するようになるにはどうすればよいのか、それを問い直そう。(meiro)

県高支部ニュースNo.34より


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