2003年12月18日
ティム・ショロック(米フリーランス・ジャーナリスト)
第2次世界大戦後の日本は、対外政策の決断を迫られる局面にさしかかると、しばしばアメリカの従属国の立場を貫いてきた。その追従ぶりは気恥ずかしいほどであり、おおかたの傍観者の眼に、日本がワシントンの主人に仕える小者にすぎないという印象が残る。
例えば1972年、アメリカが中華人民共和国を中国の正統国家と認める決定をくだし、それをリチャード・ニクソン大統領が佐藤栄作首相に伝えたのは、世界に向けた正式発表のわずか数分前だった。ニクソン“ショック”は、日本の外交官と実業家が夢想してきた数十年間の公認政策の時代をくつがえして、佐藤を悲嘆に突き落としたと言われている。
それから10年近く後、元米大使エドウィン・ライシャワーが予告なしに記者会見をおこない、1960年から日常的に米艦船が核兵器を日本の港湾と領海に持ち込んでいて、日本の政府首脳もじゅうぶん承知していたと打ち明けた。これは日本の非核3原則を突き崩す発言だった。
21世紀に入って4年にもなり、ベルリンの壁が崩壊してからも10年以上たった現在も、冷戦が始まったころに確立した日米関係はほとんど変わっていないようである。
2003年11月に日米両国が安全保障条約50周年を言祝(ことほ)いだ今、日本政府首脳は対米依存を深めようと決意しているようだ。アメリカに密着する軍事同盟が日本の国益にかなうか否かについて、国民的論議はまったく見当たらないようである。
イラクで日本の外交官2名が殺害された余波が収まらないうちに小泉が決定した自衛隊派遣は、第2次世界大戦以来、最大規模の日本軍の外国駐留になる。これは日本にとって重大な政策転換であるが、ブッシュ大統領がイラクへの単独行動主義的な先制攻撃を強行しなかったらありえなかったことだ。
全国放送された12月10日の記者会見で、小泉は
「イラク再建は中東全体と世界の安定のために必要であり、それが日本の国益になる」
と語った。これはもちろん、イラク再建は中東と世界の安定のために必要であると、ブッシュが何回も演説で披露している信念を正確になぞっている。
世界で独自の責任を担う主権国家にあるまじきことだが、
「アメリカは日本が同盟する唯一の国であり、その国がイラクに安定した民主的な政府を樹立するために懸命の努力をしている。日本もアメリカに信頼される同盟国でなければならない」と小泉は語った。
小泉の発言はあきらかに日本国民の説得を意図している。アメリカの海外軍事行動への日本の参加に反対する声が圧倒的に多い。最近の世論調査では、“非戦闘”部隊のイラク派兵に賛成しているのは有権者の3分の1ほどにすぎない。
外務省日米安全保障条約課の元課長であり、現在は駐ワシントン日本大使館の政策顧問・兼原信克によれば、これからの日本はアメリカの対外政策目標をこれまで以上に忠実に支持することになる。
ワシントンに本部を置く笹川平和財団米国が主催した12月10日の安全保障条約フォーラムで、兼原は「わが国は日米同盟に依存している」と断言した。
朝鮮戦争たけなわの1952年、領土内の米軍基地の無期限使用に同意した時点で、政府首脳が採用した国家戦略の延長線上に、現在の日本の政策があると兼原は述べた。
「わが国が新しい世界に跳躍し、国益を拡大した」のはその時点だったと兼原は言った。
「日本は持てる力を世界へ広げるために友好国が必要だった。わが国はアメリカを選択した」
朝鮮戦争の終結後、米陸軍の大半が日本から撤収したので、「日本の陸上戦力に負担がかかった」「米第7艦隊はわが国の友軍である」と兼原は言った。
さらに1997年、日本は重要な協定(訳注:『日米防衛協力のための指針』 通称・新ガイドライン)に署名し、アジアで米軍を後方支援することになり、日本の海外軍事展開は大幅に拡大した。
日本国民も24人が犠牲になったアメリカへのテロ攻撃を受けて、日本は自衛隊艦船24隻をインド洋へ派遣した。アフガニスタンで戦闘する連合軍艦船への給油実績のうち、日本の給油艦によるものは50パーセントに達していると兼原は言った。
日本が独自の外交理念にのっとって世界を舞台に行動するのであれば、日本が変わったと言うのも正しいだろう。だが、旧態依然なままの同盟関係が半世紀以上も続き、アメリカの従属的なパートナーの地位にあまんじているかぎり、日本はワシントン発の変化に追従しているだけである。すでに消滅したワルシャワ条約のパトロンが健在であれば、旧ソ連の元衛星諸国は今でもモスクワを周回する軌道を巡っているはずであり、現在の日本はそれと変わらない。
(翻訳 井上 利男 協力 星川 淳)
(TUP速報258号より)
編集後記
★アミン国連事務総長が来日し、「人道支援としての自衛隊イラク派兵」という「日本政府の貢献」に触れたとか触れなかったとか。★政府首脳にとっては喉から手が出るほど欲しかった「お墨付き」であるに違いない。自分では国民を説得する術を持たないから、権威ある外部の一言が欲しい、と。★しかし、イラク開戦支持で米英の尻馬に乗って国連をないがしろにし、無様に立ち回ったのは当の日本政府ではないか。★日本の「管理者たち」は、自分たちが何をやっているか、嘘の上塗りの果てに何も分からなくなっているのではないか。国民は蚊帳の外に置かれたままだ。何かしなければ、という私たちの想いを束ねて、大きな市民運動に育てたい。3月には、国民が国に強制的に従えという「国民保護法案」が提出される。(meiro)