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沖縄、米軍ヘリ墜落の影で……/神戸県立支部

2004年09月14日


沖縄、米軍ヘリ墜落の影で……


 「普天間飛行場の近くで黒煙が上がっている。何かが落ちたようだ。」
 社会部で電話を受けたのは十三日午後二時十七、八分ごろ。居るだけの記者を至急現場に送った。
 現状を知らせる読者からの電話が、立て続けに入った。
「沖国大に米軍ヘリが落ちた。」
「大学本館が燃えている。職員や学生は皆、逃げ回っている。」
「回転翼が空中で飛び散った。」
「大学周辺の住宅地にも残骸が散乱している。」
興奮した声。泣きじゃくる女子学生もいた。大惨事を覚悟した。

 結果的に負傷者は乗員三人にとどまったが、現場を見れば、それが奇跡的であることがわかる。学生や職員、住民に人的被害がなかったことは偶然にすぎない。

 市街地の真ん中に基地がある異常な日常。そして実際に、県民が心配していた事故は起きた。だが、平和な暮らしが脅かされている沖縄の危険な現実を、国民は果たして共有できただろうか。
 事故を報じたテレビの全国ニュースは、巨人の渡辺オーナー辞任よりも、アテネ五輪やお盆の帰省ラッシュよりも後だった。全国紙の報道もしかり。民間人の犠牲者がなかったのはたまたまなのに、如何ともしがたい温度差。本土から「沖縄」は遠い。

 事故現場では県警や消防が現場検証できない事態も起きた。事故を契機にあぶり出された沖縄の異常。「沖縄は誰のものだ」という伊波洋一宜野湾市長の叫びに共感する。この現実を、県民はもっと怒るべきだ。(武富和彦)

2004年8月16日 沖縄タイムス朝刊 1面コラム<大弦小弦>から転載
http://www.okinawatimes.co.jp/col/20040816m.html


宜野湾市。中央部が普天間飛行場。飛行場のすぐ左上にキャンプ瑞慶覧がある。飛行場の右下隣に沖国大キャンパス(茶色いグランド)が見える。クリックで拡大画像  普天間飛行場は、宜野湾市の真ん中にあって、市の4分の1を占めている。昨年11月に来沖したラムズフェルド国防長官は、上空からの視察で「ニューヨーク市のセントラルパークに軍事基地があるようなもの、事故が起きないのが不思議」と感想を漏らしている。写真や地図を見ると、だだっ広い滑走路を取り囲むように人家が密集していて、そのドーナツ状の街並みが宜野湾市だ。普天間飛行場とキャンプ瑞慶覧の間の、滑走路に比べて3分の1くらいの幅の民間地にも宜野湾市の人々は密集している。滑走路の周りにはガソリンスタンドもあり、小学校が5校と中学校が4校、高校が2校、そのなかのひとつが甲子園に出た中部商業高校である。そして、沖縄国際大学。

 8月13日金曜日、市民の道である沖国前通りに面したフェンスと、沖国大本館の間、約10mの隙間に、米軍ヘリが、機体をのめり込ませるような形で墜落した。このヘリは、CH-53Dと呼ばれる大型輸送ヘリで、完全武装した兵士37人を載せることができ、ジープなどの車両も積載可能という。
 墜落現場は、SOSを受けて現場に急行した米軍によって直ちに完全包囲された。沖縄県警も大学関係者も報道関係もすべてシャットアウトし、鎮火を待って米軍は機体撤去・すべての破片回収・周辺土壌採取をした。その間、現場検証の許可がもらえない沖縄県警は、米軍をガードする形で現場を守った。現場は完全に米軍の指揮下におかれ、宜野湾市長であろうと沖国大学長であろうと、すべて現場から排除された。周辺の街中に飛び散った大小さまざまな破片も、証拠隠滅のため、有無を言わせずことごとく回収された。
 「ここは基地ではない! 私たちが生活している民間地だ。それなのに何故米軍が私たちの町を封鎖するのか!」という怒りの声が渦巻いた。

 事故後、一部の米兵士が危険を表す黄色の防護服を着てガイガーカウンターによる調査をしていたことから、「劣化ウラン」を搭載していたのではないか、という噂が流れていた。6日、追求を受けた外務省北米局長が答弁で「沖国大に墜落した米ヘリの放射性物質は回転翼安定装置(カウンターウエイト)であり、その放射性物質はストロンチウム90である。回転翼安定装置の6個のうち、1個が行方不明。燃焼し、気化した可能性がある」と、当初「タングステンである」と言っていたのを訂正した。

 ストロンチウムは、カルシウムやバリウムの仲間で、夏の花火のあの鮮やかな赤を演出する金属。自然状態では特に毒性はないが、ストロンチウム90は、原発や原爆の核分裂過程で生じる100%人工の放射性同位体であり、半減期は29年、その性質から人体にとって最も危険な放射性核種のひとつと言われている。その性質とは、生体内でカルシウムイオンと置換されやすく、骨などに蓄積され、β線を放出するために骨の癌や白血病の原因になる、ということだ。あのチェルノブイリ原発事故では、被災地ベラルーシについて「ストロンチウム90とセシウム137が人々に内部被曝をもたらす主要な核種である(京都大学原子炉実験所)」と報告されている。
 「燃焼し、気化した可能性がある」ということは、発言者が無責任にも言外に含ませたがっている「消えてしまったから気にしなくていい」というニュアンスとは正反対に、周辺住民は、空気中に散乱し漂い、やがて降下してきた放射性ストロンチウム90を呼吸し、体内に取り入れてしまった、と言うことだ。「レントゲン撮影よりも弱い」という補助説明もまた犯罪的だ。それは、欺瞞以外の何ものでもない。事故周辺の人々は、体外から一瞬チラッと放射されたのではなく、体内に直接ストロンチウム90イオンが侵入し、骨の成分となるカルシウムイオンに紛れ込んでしまったのだ。たとえ微量であろうと、確実に体内に蓄積し、骨や血液の一部として、体内の放射線源となってしまう。それに対して、日本政府は、何の抗議もしない。

 沖縄に関する特別行動委員会(SACO)によれば、普天間基地は、代替基地建設後、返還されることになっている。ラムズフェルドの「普天間は危険」発言によって無条件返還も一時噂されたが、今や日米政府関係者の誰もそんなことは言っていない。
 その代替基地の候補(これも「閣議決定」)となっているのが、沖縄県名護市辺野古の海である。昨年度の支部ニュースNo.35('04/02/10)で、県高支部の大谷会計委員からの報告にあるとおり、辺野古は、ジュゴンが棲む青い海と、白い砂浜が続く美しい海岸である。
 その辺野古が、急激に緊張を高めている。沖国大へのヘリ墜落事故を受けて、国や県が代替基地建設促進へと動き、那覇防衛施設局が、基地建設のためのボーリング調査を9日におこなう、と発表したのだ。この調査は今年4月に行う予定だったが、この時は反対する多数の人々の座り込みによって失敗している。この時以来、辺野古での座り込み抗議はずっと続けられ、144日目に当たる9月9日、全国から駆けつけた400人が警戒する中、ダミーの船を偽装するなど、人々の目を盗んでかろうじて5個の浮標を設置した。資材置き場等の陸上施設については、まったく目処が立っていない。
 平和市民連絡会の平良夏芽共同代表は「暴力の象徴である軍事基地に反対する行動なのだから、どんなことがあってもわれわれは完全非暴力に徹しよう」と呼びかけている。


編集後記
★12日には、宜野湾市で市長を主催者とする大規模な抗議の市民大会が開かれた。★米軍は、その抗議文の受け取りを拒否した。県や市の公式文書ではない、という理由。★「基地を間借りしている」米軍は、私たちの抗議や疑問に対して答えなければならない。基地内ではなく、基地の外の事故に対してさえ治外法権を主張するなら、米軍の認識として、日本全体が、米軍の支配下にある、と言っているのに等しい。★日本政府が、「危険な飛行を控えるように」ということ以外の、何の抗議もできないのならば、日本政府は支配を容認し、米国に対して日本としての主権を放棄しているということだ。(meiro)

県高支部ニュースNo.15より


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