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憲法と教育基本法が守った教育現場での思想信条の自由 日の丸・君が代で起立斉唱強制定めた都教委通達「違憲」(神戸県立支部)

2006年09月26日


憲法と教育基本法が守った教育現場での思想信条の自由

日の丸・君が代で起立斉唱強制定めた
都教委通達「違憲」

  すでにマスコミで報道され詳細はご存じと思いますが,9月21日、東京地裁(難波孝一、山口均、知野明裁判官)は,都教委教育長横山洋吉氏が,2003年10月23日に都立学校の各校長に対して「入学式,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について(通達)」は違憲であるとの判決を出しました。この判決の意義を,教育基本法「改正」議論のあるなかで,判決文を下に,再確認をしてみます。
 判決文の主文を要約すると

 @ 式典会揚において,国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する義務のないこと。起立しないこと及び斉唱しないことを理由として,いかなる処分もしてはならない。
 A 国歌斉唱の際に,ピアノ伴奏義務がないこと。ピアノ伴奏をしないことを理由として,いかなる処分もしてはならない。
 B (都被告は原告教員403人全員に)各3万円及びこれに対する平成15(2003)年10月23日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。→これは賠償請求の要求満額

東京都通知の無効


























 さて,判決に至った裁判の争点を確認してみます。判決文には争点は3点としています。

争点1 「通知が出された時点(2003年10月23日)から損害賠償請求が可能か」

(公的義務の不存在確認請求及び予防的不作為請求の是非。・・・法律用語は難しい。)

 裁判所は,何かの被害を受けてから訴えるのが現行法,と前置きをしながら,10・23通知が出たときに,将来,この通知に反して起立等しなければ,懲戒処分を受け,再雇用も拒否されるということは推論できるので,自己の信念に反して従うかの岐路に立たされる。 この通知が違法だった場合に損害を受ける権利は,「思想・良心の自由等の精神的自由権にかかわる権利であるから,権利侵害があった後に,処分取消請求,慰謝料請求等ができるとしても,そもそも事後的救済には馴染みにくい」として訴えを適法としました。


争点2 「入学式,卒業式等の国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し国歌を斉唱する義務,ピアノ伴奏をする義務の存否について」

 ここでは,争点を更に分けて,判断を下しています。

判断@ 判決文の冒頭で,憲法19条「思想・良心の自由」によって,内心の制約は許されず,他者の権利を侵害するなど公共の福祉に反しない限り,最小限の制限にとした上で,
 「我が国において,日の丸,君が代は,明治時代以降,第二次世界大戦終了までの間,皇国思想や軍国主義思想の精神的支柱として用いられできたことがあることは否定し難い歴史的事実であり,国旗・国歌法により,日の丸,君が代が国旗,国歌と規定された現在においても,なお国民の間で宗教的,政治的にみて日の丸,君が代が価値中立的なものと認められるまでには至っていない状況にあることが認められる。このため,国民の間には,公立学校の入学式,卒業式において,国旗掲揚,国歌斉唱をすることに反対する者も少なからずおり,このような世界観,主義・主張を持つ者の思想・良心の自由も、他者の権利を侵害するなど公共の福祉に反しない限り,憲法上,保護に値する権利というべきである。」と日の丸・君が代への考え方を示した上で,反対する者の権利を認めています。

判断A 東京都の『学習指導要領に従った』等の主張に対して,
 「学習指導要領は,原則として法規。・・・教育における機会均等の確保と全国的な一定の水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な基準に止めるべきもの。そうだとすると・・・内容的にも教職員に対し一方的な一定の理論や観念を生徒に教え込むことを強制するようなものである場合には,教育基本法10条1項所定の不当な支配に該当するものとして,法規としての性質を否定するのが相当」と,学習指導要領を法的なものとしながらも,その上にある『教育基本法』に違反する条項は誤りとしています。

判断B 「音楽科担当教員は,音楽科の授業においてピアノ伴奏をする義務を負っているものの,入学式,卒業式等の式典における国歌斉唱の伴奏は音楽科の授業とは異なり、必ずしもこれをピアノ伴奏で行わなければならないものではない。

判断C 拒否すれば,『日の丸』・『君が代』がよいと思っている人に不快感を与えるという意見に関しては,「これとは異なる世界観,主義,主張等を持つ者に対し,ある種の不快感を与えることがあるとしても,憲法は相反ずる世界観,主義,主張等を持つ者に対しても相互の理解を求めているのであって(憲法13条等参照),このような不快感等により原告ら教職員の基本的人権を制約することは相当とは思われない。」

 上記の,@〜Cの判断から,懲戒処分等をするのは,裁量権を超えその濫用になるから,教員が起立斉唱等を「行う義務はなく,都教委が懲戒処分等をしてはならない旨命ずる」としています。


争点3 「損害賠償請求権があるのか」

 違法な通達とそれに基づく学校長の職務命令で,起立、斉唱、ピアノ伴奏をする義務が無いのに,式典で「するか否か」と迷わされたり,自らの思想・良心に反して通達と学校長の職務命令に従わされたことで,精神的損害を被ったことが認められる。
 したがって,損害額は,「1人当たり3万円を下らないもの」で,請求は通知が出された日から遡って請求できるとしました。


結論「少数者の思想良心を侵害し行き過ぎた措置」

 ここ(結論)の表題は判決文からの抜粋ですが,判決文は,日本国憲法と教育基本法を基本法規として,この判決の構成を組み立ててきたと考えられます。

 これまで,教育に関する行政裁判は,ほとんどの場合,行政側が勝訴してきた歴史があります。そのため,判決の日,東京都教育委員会の担当者は都庁にも裁判所にもおらず,余裕でいたようですが「まさか」との衝撃を受けています。石原都知事も記者会見で「裁判官は,都立高校の実態を見てるのかね?平均的なレベルの高校を見たけど,決して暴力教室的ではないけど乱れに乱れてる。先生の言うことは聞かない。ただこういうものの規律を取り戻すためにある種の統一行動は必要でしょ?その一つが式典での国歌に対する敬意だと思う。それが全てとは言わないけど,それも1つの手だて」と現在の東京都の学校現場の混乱(学校間格差の拡大、小中学校の自由学区制、障害児学校の統廃合、等々)を生み出している本人が筋違いの発言をするなどの焦りを示しています。
 小泉首相も安倍新首相候補も,動揺は隠せない模様です。
 全職員の皆さんに呼びかけます。たとえ「少数」でも思想信条の自由を守る憲法と,それを支える教育基本法の改悪を絶対に阻止するため,“暑い”秋の戦いを共に歩みましょう!
 原告団の皆様の奮闘と努力に県高支部は敬意と賞賛を送ります。


2006県高支部ニュースNo18より


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