シリーズ 有事法制を斬る(その2)
「悪の枢軸」と有事法制
先週号では、アメリカの世界戦略とその分担を求めるアメリカの圧力が有事法制を急浮上させたことを述べました。今号では、そのアメリカの世界戦略を調べてみます。
「悪の枢軸」発言 - この20年で最大の軍拡予算
今年1月29日に発表されたブッシュ大統領の一般教書(政策の基本方針)は、45分強の演説のうち30分を「対テロ戦争」問題に費やした異様なものでした。すでにこの段階でタリバンの主力は壊滅し、1週間前には東京でアフガン復興支援国際会議が開かれていました。しかし、ブッシュ大統領は「対テロ戦争はアフガンで終わるどころか、まだ始まったばかりだ」と述べ、「テロ支援国家」として、北朝鮮、イラン、イラクを名指しして「悪の枢軸」と呼びました。
2月4日、議会に提出された軍事予算案は、「テロとの戦い」を口実に、前年比13.5%(480億ドル=6兆2千億円)増の過去20年で最大の軍拡に乗り出すものとなりました。増額分だけで世界第2の日本の年間軍事予算を上回るものです。
7ヶ国に対して核兵器使用計画! - 「抑止」から「使用」への転換
3月9日付け米紙ロサンゼルス・タイムズや10日付NYタイムズ紙は、ブッシュ米政権が北朝鮮、イラク、イラン、中国、ロシア、リビア、シリアの七カ国に対して核兵器の使用計画を策定するよう軍部に指示していたと報じました。これは、国防総省の機密文書「核戦力の見直し計画」(NPR)に盛り込まれていたものです。
核兵器使用のシナリオでは、非核攻撃に耐えられる標的の攻撃や大量破壊兵器使用への報復のほか、「予期せぬ軍事動向」にも核を使うというのですから、核使用の制約条件はないに等しい状況になっています。地域的には、中国・台湾間や朝鮮半島など、日本に極めて近い地点での核使用が想定されていることは重大です。またNPR機密部分では、小型核兵器開発以外にも、空軍の巡航ミサイルを「必要なら核弾頭を運搬できるよう改良する」ことや、新規配備されるF35共同攻撃戦闘機が「手ごろな価格で」核兵器を搭載できるよう改良することも指示されているといいます。「核兵器の使用は最後の手段に限られるとする長期にわたる『タブー』を、ブッシュ政権が踏み越えようとしているとの見方がある」とロサンゼルス・タイムズ紙は強調。「(ブッシュ政権は)核兵器の使用が抑止に限定されているなかで、核兵器の新たな使用法を必死に見いだそうとしている。きわめて危険なことだ」との専門家の声を紹介しています。
世界に広がる反発 - 際だつ日本の同調ぶり
これら一連のアメリカの動向に、中国、ロシアはもちろん、フランス、ドイツなど欧州の同盟国を含め世界各国から批判が高まっています。米科学雑誌『ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ』の理事会は2月27日、シカゴ大学の同誌事務局にある核による「終末時計」の針を4年ぶりに2分進め、世界滅亡7分前に設定。同誌理事長のロペス氏は、「テロリストが核・生物兵器を獲得しようとする動きは重大な危機であるが、米国が外交よりも先制攻撃を優先させていることも危険だ」と、米政権の単独行動主義を批判。ブッシュ大統領の「悪の枢軸」発言は「テロ根絶や世界的安全保障を強化する努力を複雑なものにする」と指摘しました。
ところが、小泉首相は、大統領の「悪の枢軸」発言に「米国のテロに対する毅然たる決意を表したもの」と支持を表明。また、ブッシュ大統領は、「日本は米国の前方展開軍に寛容だ。日本政府ほどしっかりした支援をしてくれる国はない」と、日本の対米軍事支援を高く評価しました。そういう世界に例を見ない対米従属姿勢が、今、有事法制を生み出そうとしています。アメリカの世界戦略を見れば、その危険性は明らかです。
東播支部ニュース No.2 2002年4月16日付より
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