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【転載】再び「競争的な教育制度の改善」求めた国連子どもの権利委員会
その勧告を生み出した審査(1月28日)の報告

2004年02月17日


1月30日、国連子どもの権利委員会による日本政府への2回目の勧告が出されました。日本政府は、前回勧告された「競争の教育」は、「15歳人口の減少などで緩和されている」などという報告書を提出していました。これに対して、「日本の子どもの実態を国連へ」と多くの市民・団体(全教含む)から報告書が出されました。そして、1月27日には日本の子どもたちによる意見表明の場が与えられ、翌28日に6時間に及ぶ日本政府への審査が行われました。今回の勧告には「子どもの本当の姿を知ってほしい」という多くの声が反映し、「子どもの最善の利益」を願う世論と運動に大きな力を与えるものです。

実際、審査の中では「子どもから聞いたが・・」「NGOによると」という委員の発言が何度もありました。全教はジュネーブに代表団を送り審査を傍聴してきました。そこで、今回の勧告を生み出した審査の様子を学校教育の分野を中心に報告します。 

(注:○は日本政府・文科省の発言、●は国連の委員の発言。)

政府の冒頭報告に質問が続出

冒頭の政府報告の特徴は、首相を中心に体制も整え、様々な対策をとったということでした。しかし、競争的な教育制度を改善するためにどんな効果をあげたかを実証する内容ではありませんでした。文科省は、国内では学校に対してさんざん「説明責任」「成果を」といっているのですが・・。質疑の様子は、

○国政上の企画立案調整のため内閣府を設置した。首相を責任者として青少年育成推進本部を設置。青少年育成政策大綱を決め、・・この大綱に沿ってすすめる。

○子どもの権利条約にも十分配慮し、一人ひとりの個性と能力を十分伸ばす教育。・・等 日本政府の説明が終ると、各委員から次々に質問が出されました。

●政府の調整メカニズムを勧告したが、包括的政策の形成を獲得していない・・。

●いろいろな機会に競争が激甚だと理解している。どんな措置をとったのか?子どもはどのように意見が言えるのか?

●レターや証言を聞いているが、十分子どもは意見を聞いてもらえていないように聞いている。法律面でどう対策をとっているのか?

質問は多面的で、特に子どもの意見表明権の基盤が脆弱であるとの指摘が目立ちました。政府の政策・改革が「当事者である子どもの声を反映していないのでは?」という疑問が会場全体の共通認識(日本政府を除いて)になってきました。

具体的な問題で政府の姿勢を問う

これらの質問への政府の回答では、「推進している」「指導している」という言葉が目立ちました。

○今後の青少年行政は推進本部が大綱に基づき、子どもの権利条約の主旨を生かして総合的に推進する。地方の担当者を集めて会議をしている。国の方針を伝えたり地方と国で協議している・・。

○学校行事や校則は、できるだけ自主的な活動を促す指導をしている。・・等

これに対し、市民報告書や子どもの意見表明を反映し具体的な質問が数多く出されました。

【教育制度・学習指導要領・いじめ・不登校】

●競争は激甚、豊かな国で不登校率がなぜ高いのか?

●いじめは他国同様に深刻だと聞いている。防止のためのプログラムがほとんどの国にあるが、日本では?

●自殺・不登校につながるストレスに対して根本的な対策をとっているのか?週5日制にして新学習指導要領にしてもストレスは減るのか?

○(憲法・教育基本法を引いて)「学校ではこれにそって一人ひとりを大切にした教育が重要と思われる」 と述べ、指導要領で人権尊重の教育をこれまでも取り組んできた、今後も一層推進すると語りました。

○(学習指導要領改正で)全員に共通に教える内容を注意深くセレクトし、・・一人ひとりに応じたきめ細かい指導で基礎基本をきちんと理解させる。理解できた子どもには、進んだ内容を深く理解させる。

○(いじめ)対策は、わかる授業で楽しい学校、心の教育、教師の能力向上、スクールカウンセラー、・・・小中高校のいじめは7年連続で減少して、取り組みの成果と考えられるが、相当数にのぼるので引き続き取り組みたい。

○不登校については、02年に初めて減ったが依然として相当数。対策は、子どもが安心して通える学校、相談体制の充実、センター充実、地域ぐるみのサポートシステム・・

学習指導要領で内容を厳選したので競争は改善されているかのような説明に対して、「試験や競争をそ のままにしておいてカリキュラムが少なくなったのでは、逆に子どものストレスはもっと高くなるのではないか」と委員からずばり指摘される場面もありました。

【教科書検定・歴史教科書・心のノート】

●歴史教科書では、ある見方しか示さないと聞いているが?(歴史教科書問題を隣国と共同して解決してきた委員の自国での経験を話しながら)

●(心のノートなどをとりあげて)教育基本法10条違反だと(NGOから聞くが)教育内容に介入していると意見があるが?

○歴史教科書問題では、事実経過に言及せずに、隣国との対話を通して専門家が定期的に会合を行っているので、両国の人々の見方が変わっていくと思うと見解を述べました。

○(教科書検定制度)教科書の作成は民間に委託し創意工夫されている。検定は、客観的・公正か教科書をみている。歴史教科書については、国が特定の認識に立つものでない、客観的・学問的成果、事実に即して検定意見をつけている・・・

【都立定時制高校の統廃合】

●夜間学校が、東京でなぜ一部閉鎖されるのか?たとえ人数が多くなくても、不登校などの子どもに2度目のチャンスを与えることができるのだから

○定時制は、一般的に設置・廃止は都教委の判断。したがって都教委が適切に判断した。一般的に、数が著しく減る・他に通う手段があると廃止が行われる。

 政府の定時制の教育的意義を問うた質問に対して、それは地方の教育委員会の権限だとの説明に、超 満員の傍聴席から一瞬「えー」とどよめきがあがりました。このやりとりは、都立高校の統廃合につい ての子どものスピーチが反映しています。その後、国連の最終所見でこの問題が具体的に指摘されました。

【日の丸・君が代の押しつけ】

●思想・良心の自由について、子どもが思想・意見表明を一部禁じられている。国旗・国歌(問題)などはどんな状況か?

○(国旗・国歌)学校での指導はおしつけとの意見だが、そうでないと考える。

○学校での指導においてはその意義を理解させ尊重する態度を養う、他国の国旗・国歌についても同様。これは、内心に立ち入って強制するものではない。

国連の場での説明とは違って指導の名による強制が学校に吹き荒れています。しかし、国連の場で「内心に立ち入って強制するものではない」と政府代表団が発言したことは、今後の国内での取り組みに生かすべき内容です。

【高校生の政治活動】

●生徒の政治活動は、校内での活動は原則禁止なのか? 校外では?

○政治的教養を豊かにする教育は推進したい。政治活動とは、特定の団体や政党に反対もしくは賛成の活動と考えている。学校の場を利用することを禁止、校外も教育上の観点から指導・・等

●(回答は)どちらかというと制限措置をいっているが、私の質問はむしろ前向きの措置を推進しているのかということ。それとも(日本では)制約だけなのか?

子どもの権利保障の観点でものごとを考えない姿勢に、委員からは上記のような指摘がいくつもあり ました。

前回の勧告を受けて改善して効果があがってきたかという質問に対して、文科省は「〜と指導してい る」ということばかり強調したので、ついに委員からこんな質問も飛び出しました。

●「(今の説明で)指導と10回ぐらい言っているが、この言葉を説明してほしい!・・・

これに対して文科省は、「指導とは、教え導くということです」と「回答」したので、場内からは失笑も・・・。 一方、子どもの権利がどのように保障されているかなど、政策の弱点を突かれると、憲法や教育基本法を持ち出し「保障されている」という説明もありました。例えば、

○生徒の意見表明権は憲法でも児童に保障されている。プライバシーはもちろん尊重される・・

〇(基本的人権の尊重)憲法・教育基本法と考え方は同じ。学校ではこれにそって一人ひとりを大切にした教育が重要と思われる。 

これらの説明は、憲法と教育基本法が、子どもの権利条約の理念と一致する事を証明するもので、教 育基本法の全面改悪をめざす政府の姿勢になんの道理もないことを示したものです。

議長の「次回政府報告書を、2006年5月21日までに提出されることを期待する」との発言で終了しました。

審査の特徴は、

  1. 多彩な報告書や前日の子どもの意見表明が力になり、各委員が日本の実情を理解され、政府の政策を子どもの実態をもとに具体的・総合的に問いただしていました。
  2. 学校に「説明責任」を求め、成績主義で「効果をあげよ」と国内で強調する文科省ですが、国連の場では、自らの政策の効果を実証する姿は見られませんでした。
  3. 前回の勧告で指摘された競争的な日本の教育制度が子どもの発達に及ぼす悪影響の問題など、政府・文科省の政策全体が改善されていないことが、より具体的に明らかになりました。 

審査終了後、90名を越す傍聴団は交流パーティを開催しました。これには国連子どもの権利委員会の委員多数が参加されました。そして、参加者のスピーチを通して、「子どもの最善の利益」のために勧告を生かした今後の国内の取り組みの意義が共通に確かめられました。

全教は、国連子どもの権利委員会の勧告を生かす取り組みを多くの人々と共同して進めていきます。

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教育基本法改悪反対ニュースNo.165号
04年2月17日付け 全教発行 より転載


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