本資料の発行にあたって
高教組は、この間、勤務時間問題を重点課題として取り組みを進めてきました。1999年1月11日に「泊を伴う学校行事における超勤問題での基本合意」を県教委と結び、泊問題での討議資料や勤務時間全般の学習討議資料を発行し、少しずつではありますが、勤務時間問題の解決に向けて取り組みを前進させてきました。
2000年確定交渉では、独自要求の最重点課題として交渉を積み重ね、4月3日、高教組の要求を盛り込む形で、県教委に通知(資料1参照)を出させることができました。本資料は、この通知を各職場で実効あるものとするため、通知内容の活用を目的として作成したものです。
各職場での勤務時間問題の解決のため、いろいろな形で活用していただけたらと思います。
《資料1》
| 各県立学校長 様
教職員課長
法令等に基づく勤務時間等の適切な運用ついて(通知)
みだしのことについては、かねてから指導を願っているところでありますが、昨年10月の県人事委員会勧告でも超過勤務の縮減と職員の健康管理対策の必要がいわれていることから、年度が改まるに際して、今一度以下の諸点について留意し、教職員の勤務時間等の管理が適切に行われるよう指導願います。
(1) 時間外勤務について
教育職員の勤務については、その職務の特殊性から、機械的な時間管理はなじまない面があるが、教職調整額支給について規定した「国立および公立の義務教育諸学校等の教育 職員の給与等に関する特別措置法」においても、教育職員の超過勤務を極力少なくすることを立法の趣旨としていることを踏まえ、時間外勤務については、いわゆる超勤4項目に限り、法令等に従って限定的に取り扱うこと。
(2) 週休日等における勤務について
週休日等の振替は「週休日等の振替等実施要領」に従うものとし、安易に週休日等における勤務の設定等が行われないよう注意すること。
(3) 泊を伴う学校行事について
あらかじめ職務等を正規の勤務時間以外の勤務時間帯に設定する必要がある泊を伴う学校行事においては、勤務時間の割り振り変更を行い、職員に周知すること。また、その場合でも、職員の負担が加重にならないよう配慮すること。
(4) 宿日直勤務について
学校運営上、宿日直勤務が必要な場合には、労働基準法上問題が生じることの無いよう留意すること。
特に、育児や介護すべき者を抱える職員については、「職員の勤務時間、休暇等に関する条例」によって、深夜勤務および時間外勤務の制限が規定されていることに十分注意し、個々の職員の事情に十分配慮しながら、宿日直勤務を命ずること。
(5) 休暇等の活用について
年次有給休暇、夏季休暇等の取得推進については、かねて通知等で依頼しているところであるが、職員の心身両面でのリフレッシュと自己啓発に資するため、学校現場においても、例えば永年勤続表彰を受ける年度に年次休暇等をまとめて取得することなど、年間を通じて計画的に年次休暇等の取得が可能となるような配慮を行うとともに、年次休暇の取得の促進を図ること。
(6) その他
職員の服務に関する帳簿等の管理については、より一層的確に行われるよう留意すること。
勤務条件等を変更する場合には、事前に明示する等、法令等に基づく手続きを的確に行うこと。 |
1.「時間外勤務について」の解説と活用
校長は、教育職員に対して、原則として超過勤務を命じることはできません。1972年1月1日「国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」が制定されましたが、国は、この法律により、教職調整額と引き換えに、私たちから超勤手当を請求する権利と三六協定締結の権利を奪ってしまいました。
しかし、組合は大規模な反対運動を展開し、その反撃により、「原則として超勤は命じない」ことや「命ずる場合の規定(限定項目)」(資料2参照)を認めさせ、無定量の超勤に歯止めをかけました。さらに、その具体化として、文部省通達の中に、超過勤務をさせた場合に「適切な配慮」をすることなどを盛り込ませました。その「適切な配慮」とは何かについては、各県で回復措置としてとることとして承認(労使合意)しています。兵庫県においても「了解事項」として、高教組と県教委とが合意しています(合意内容は後述)。
したがって、教職調整額の支給が回復措置をとらせない根拠となるかのような一部の校長の発言は、誤りであり、許されません。
※三六協定…労働基準法36条に基づく協定。労働組合との協定がなければ時間外勤務、休日勤務を命じることはできない。
違法な超勤の放置は、校長の責任
「時間外勤務は、職務命令に基づくものであって、そうでないものは、時間外勤務とはいえない」などと考えている校長もいます。しかし、この考え方は、過去の裁判で当局側が主張し、ことごとく破れた主張です。
たとえ、時間外勤務命令がなくても、校長が知っていたか、知り得た場合は、時間外勤務として扱われなければなりません。文部省が発行した「新学校管理読本」でさえ「勤務の内容が客観的にみて正規の勤務時間内でなされないと認められる場合にあっては、間接的に時間外勤務命令(黙示の命令)があったものと見なされる」としています。教職員が勤務時間内に仕事が終えれるよう条件整備を行わず、「勝手にやっている」などと放置している校長の姿勢は厳しく問われなければなりません。
限定4項目の超勤も「教職員の意向が尊重」されなければならない
「限定4項目」に基づく超過勤務を命じる場合であっても、校長の独断で超過勤務を命じることはできません。文部省は通達において「時間外勤務を命じる場合は…健康状況等を勘案し、その意向を十分尊重して行うようにすること」を求めています。限定4項目であるからといって、当たり前のように超過勤務を命じることはできません。
《資料2》
教職員の勤務時間、休暇等に関する条例
第11条 学校教育法に規定する小学校、中学校、高等学校、盲学校、聾学校または養護学校の職員のうち教育公務員特例法の適用または準用を受けるもの(以下「義務教育諸学校等の職員)には原則として時間外勤務は命じないものとする。
2
義務教育諸学校等の職員に対して時間外勤務を命じる場合は、…県教育委員会規則で定める場合であって、臨時またはやむを得ない必要があるときに限るものとする。
義務教育諸学校等の職員に対し時間外勤務を命ずる場合を定める規則
(1)生徒の実習に関する業務
(2)学校行事に関する業務
(3)教職員会議に関する業務
(4)非常災害時等やむを得ない場合に必要な業務
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2.「週休日等における勤務について」の解説と活用
休日制度は、労働者を労働から解放し、疲労回復、私生活でのエンジョイを目的としたもので、労働基準法第35条で保障されている権利です。にもかかわらず、「振り替えさえ保障すれば休日勤務させてもよい」などと安易に勤務を命ずる校長も少なくありません。教育職員以外であれば、いくら振り替えを行ったとしても休日給(割増賃金)を支給しなければならないケースがあり、休日出勤は極めて限定された場合にのみ行われなければなりません。自治省も「できる限りさけるべき」と指導しています。
週休日等とは…週休日+休日
週休日
労働基準法第35条は、「使用者は労働者に対し、毎週少なくとも1回の休日を与 えなければならない」と規定しています。
また勤務時間条例第4条は、労基法35条を受け、
「日曜日及び土曜日は週休日 とする」とし、「週休日」を勤務時間を割り振らない日として規定しています。つま り週休日は労基法でいう休日ということになります。
しかし、わたしたち教育職員については、学校が土曜開校している関係で、特例と して、第1.3.5週の土曜日を週休日としない代わりに長期休業中等の「週休日の まとめ取り」を行っています。
休日
勤務時間条例第12条は休日についての以下のような定めを行っています。
「休日には、特に勤務することを命ぜられる者を除き、正規の勤務時間中においても勤務することを要しない」とし、具体的には、国民の祝日、12/29〜1/3等と定 めています。つまり、条例上でいう休日は、週休日と違い勤務時間は割り振られてい るものの、勤務しなくていい日となっているわけです。
※勤務条例でいう「休日」と労基法にいう「休日」とは異なります。
週休日等に勤務を命じることができる業務
週休日や休日に勤務させることは、労基法の趣旨から考えても極力さけなければなり ません。県教委も、「週休日等の振替等実施要領」の中で、週休日や休日に勤務させる ことのできる対象業務を以下の3点に限定しています。(資料3参照)ですから、この 業務以外で週休日や休日に勤務させることはできません。
《資料3》
・恒例の学校行事
・対外運動競技等大会(総体や新人戦等、3号業務)
・高等学校入学者選抜学力検査事務 |
週休日に勤務を命じる場合の手続き
週休日等に勤務を命じる場合は、事前に、勤務時間や勤務内容、振替日を明示する必要があります。また、週休日等の振替日については、基本期間内、公務に支障のある場合は事後4週間以内に設定しなければなりません。よって、休日勤務がいきなり行事計画に入っていたり、「今度の日曜日頼みます」などの一言で済ませることは、明らかに「週休日等の振替等実施要領」に違反しています。
《資料4》
週休日等の振替等実施要領
4.週休日等の振替等の実施方法
(1)
割振権者は、週休日または休日(以下「週休日等」という)に勤務を命ずる必要がある場合には、週休日等のうち勤務を命ずることとなる日、当該振替勤務日の勤務時間及び勤務の内容並びに週休日等の振替日を決定し、あらかじめ当該職員に対して明示するものとする。 |
3.「泊を伴う学校行事の勤務時間について」の解説と活用
1999年1月11日、高教組はこの問題で県教委と基本合意(資料5参照)を結びました。これによって、これまで放置され続けてきた、泊行事の勤務時間問題の解決で一定前進を勝ち取りました。
《資料5》
泊をともなう学校行事における超勤問題での基本合意
- 問題を解決するための基本的考え方
両者は、泊をともなう超過勤務問題を、関連法令、条例・規則・通知、及び高教組と県教委との確認・了解事項に基づき解決する。
- 超勤実態について
県教委の調査によれば、1泊につき6時間相当の超勤実態がある。
高教組の調査によれば、1泊につき8時間相当の超勤実態がある。
- 具体的な、解決方法について
- 学校長は、関連法令、条例・規則・通知、及び高教組と県教委の確認・了解
事項に基づき、時間外勤務が生じないよう事前に勤務時間の割り振りを行う。
- 学校長は、泊をともなう行事期間中に、正規の勤務時間を越えて割り振られた勤務時間(いわゆる超勤実態)は、原則として、前日及び行事前後1週間以内の勤務時間の割り振りにより解消する。
- 学校長は、関係職員に事前に勤務時間の割り振り表を示し、職員会議に報告する。
- 学校長は、勤務時間の割り振りを行ったにもかかわらず、「臨時又は緊急やむ得ない事態」が生じ、超過勤務を命じた場合には、すみやかに回復措置(「適切な配慮」)を行う。
- 高教組、県教委は、それぞれ分会、学校長を通じて上記事項が守られるよう指導する。
- その他、必要な事項は引き続き協議する。
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勤務実態に応じて割り振り変更を行う
基本は行事計画表
基本合意を結んだ当初、基本合意の法的裏付けがあることを十分理解できず、多くの校長は、勤務実態を全く無視して、「県教委がいうから1泊につき6時間の超勤」などと、基本合意の趣旨を逸脱する割り振りを行ってきました。しかし、このような割り振りが労働基準法に違反することは明確であり、人事委員会や労基署も「問題だ」とする中、県教委も「1泊につき6時間などという指示はしていない」とし、現段階でこのような機械的対応に固執する校長は少なくなってきました。しかし、いまだに、「違法行為」を続ける校長もおり、その責任は極めて重大です。
割り振り変更で、勤務時間を0時間とすること=丸1日「休む」ことができます。
これまでは、例えば、修学旅行後に1日休める日があっても、校長が割り振り変更で勤務時間を0時間とすることをしなかったため、1時間年休を取るなどしなければ、まる1日「休む」ことができない学校が多くありました。それが、1/19日付メール(資料6参照)によってすっきりと1日「休める」ようになりました。
行事計画に基づき勤務実態があれば、22時以降でも勤務時間を割り振らなければなりません。
勤務実態があるにもかかわらず、校長が「深夜業手当」との関係で「22時」という理由をもって勤務時間を割り振らず、「サービス残業」を強いることは、労働基準法上許されるものではありません。各学校の実態として、「泊を伴う学校行事」において、22時までにすべての仕事を終える計画というのは、極めて立てにくいのが現実です。校長は、22時以降であっても、行事計画に基づき、勤務実態があるのであれば、勤務時間を割り振らなければなりません。もちろん高教組は、22時以降の勤務を奨励するものではありません。22時以降の深夜業務のあり方については、教職員の過重負担とならないよう最大限の配慮がなされることが大切です。
《資料6》
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県教委発2001年1月19日付けメール
泊を伴う学校行事に係る勤務時間の割振りについて
標記のことについて、従前より午後10時までを限度とし、又割振り変更を1日8 時間行い勤務時間を0時間とすることはできないこととしておりましたが、今後はこ れにこだわることなく勤務時間の割振変更ができることとしました。
なお、午後10時以降に割振りを行う場合において、職員の健康状況を充分配慮さ れ、適切な勤務時間の管理が行われるようお願いします。 |
4.「宿日直勤務について」の解説と活用
県の勤務条例第10条は「正規の勤務時間以外において職員に設備等の保全、外部との連絡及び文書の収受を目的とする勤務その他人事委員会規則で定める断続的な勤務を命ずることができる」と定め、さらに人事委員会規則第7条の定めの中に高等学校の舎監、障害児学校の寄宿舎教員、動植物管理の当直等があります。つまり、これらの勤務は、断続的な勤務ということで正規の勤務と見なされないため手当てが支給されるだけで、勤務時間の割り振りもされず、超過勤務とも見なされず、割増賃金も支給されません。
実態とはかけ離れた取り扱い
文部省は寄宿舎教員の夜間勤務が、
- 通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後のものであり、
- 夜間に従事する業務が、一般の宿直業務のほかは、少数の寮生に対して行う夜尿起こし、おむつ取り替え、検温等の介助作業であって、軽度かつ短時間の作業に限り、夜間の寮生の生徒指導、起床後の着衣指導等通常の労働と同態様の業務を含まず、
- 夜間に十分睡眠をとりえ、
- その他一般の宿直許可の際の条件を満たしている
場合には宿直業務として取り扱うとしています。
しかし、およそ宿直業務とはいえないような勤務実態もあり、寄宿舎教員の負担も大きくなっています。
1週間に1回が大原則
宿日直業務は、勤務時間を割り振られた勤務ではありません。ですから、当該職員にとっては大きな負担となり、校長が、この点をしっかり踏まえて、業務に当たらせることは当然です。労働省の通知でも「原則として、宿直については、週1回を基準とすべきである」となっています。しかし、一部校長は、労基法の趣旨を逸脱する1週間2回の宿直業務を押しつけようとしています。このような行為は決して許されるものではありません。
いずれにせよ、宿日直業務に関する問題は、通知によってのみ解決されるものではなく、今後の取り組みが重要です。
5.「その他(勤務条件の変更)について」の解説と活用
勤務条件にかかわる事項については、分会との交渉事項です。このことは県教委も交渉の中で「そうだ」と回答しています。よって勤務時間の割り振りに関することは校長の職務権限ですから、これを拒否するなどということは、許されることではありません。「泊行事」における勤務時間の割り振りや週休日等に勤務させる場合、限定4項目に基づく超過勤務をさせる場合など、前もって分会と協議し、職場合意を得ることはもちろん、当該日の勤務時間や振り替え勤務日を明示することも当然です。
また、勤務時間の割り振り変更によって生じる事項の中には、校長に決定権限を与えられていないものが含まれる場合も考えられます。しかし、判例では、「校長自身の権限によって妥結できない事項についても交渉に応じ、それを上司に正しく報告し、その実現に努力する義務がある。」(浦和地裁)と、そのことを理由に交渉を拒否できないなどとしています。
終わりに
わたしたちの勤務実態は、労働条件の最低基準を定めた労働基準法にさえ、違反するという状況です。そして、これまで、このような実態が多くの職場で放置され続けてきました。今回の「通知」が出たことによって、校長だけでなく、わたしたち自身にとっても、勤務時間問題を考えるいい契機となります。
「通知」だけでは、勤務時間問題や多忙化する職場環境が改善することはありません。それぞれの職場で、様々な議論や校長交渉などを通じて、この「通知」を実効あるものにしていきましょう。この討議資料が、少しでも役に立てれば、と思います。また本討議資料への意見等ありましたらぜひ本部まで連絡ください。
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