ブリクス国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)委員長が十四日の国連安保理会合で行ったイラク査察に関する追加報告の詳報は次の通り。
査察の強化と実績
われわれは(査察)能力を強化してきた。ヘリコプターも十分に活動している。飛行禁止区域での移動も改善された。イラク到着以来、三百カ所以上で四百回以上の査察を行った。すべての査察は通告なしに行われた。イラク側は原則として全施設への立ち入りを認めている。その点で問題はない。
査察は、産業関連施設、弾薬庫、研究センター、大学、大統領宮殿、移動研究所、ミサイル製造施設、軍事キャンプ、農業関連施設で行われた。
二百以上の化学サンプルおよび百以上の生物学サンプルをさまざまな施設から採取した。その四分の三は検査が行われた。現在までの結果は、イラクの申告に合致している。
UNMOVICが封印していた約五十gのマスタードガスを廃棄する過程を開始した。その三分の一がすでに廃棄された。われわれが他の施設で見つけた実験室量のマスタードガスの前駆物質(製造過程でつくられる物質)もすでに廃棄された。
イラク側の協力
一月二十七日の報告でイラクは原則として査察に協力すると決定したようだとのべたが、この印象は変わらない。大統領施設や民間居住地を含め、申告や査察が行われてこなかったところへの立ち入りは全く問題がない。
今日の状況下で、イラクが(査察に)意欲的に応じることが期待できる。バグダッド滞在中、われわれは、南アフリカ共和国代表団と会った。南アは、IAEA査察官との二年間にわたる全面的な協力によって核兵器を解体したことでいかに世界の信頼を得たかを説明するためにきていたのだ。私は、南アが今後の話し合いのために専門家グループを派遣することをイラクが受け入れたと聞いた。
イラク側の説明不足
イラクの大量破壊兵器および関連の禁止品目や禁止プログラムは、もしあるとすれば、どの程度残っているのか。これまでのところ、そのような兵器をいっさい発見していない。本来は申告され、破壊されていなければならない若干の空の化学弾を発見しただけだ。
多くの禁止兵器や禁止品目(の行方)が説明されていない。イラクが提出した文書は、約千トンの化学物質について「説明されていない」ことを示唆している。
ここからそれが存在しているとの結論をいきなり引き出してはならない。しかし、その可能性も排除できない。もし存在するなら、それを差し出して廃棄すべきである。もし存在しないなら、その旨信頼できる証拠を提示すべきである。
われわれは、多くの政府情報機関が、禁止された兵器や品目や計画がひきつづき存在していると確信し、そう主張しているのを十分に自覚している。米国務長官は、こうした結論を支持する資料を提示した。その報告は、査察官自身が吟味し、公に提示できる証拠だけに基づかなければならない。
以前の報告の中で私は、炭疽(たんそ)菌、VX神経ガス、長距離ミサイルに言及し、これらの問題は「払いのけるのではなく、イラクによって深刻に受け止められるべきだ」とのべた。
イラクが昨年十二月七日に提出した申告は、未解明の諸問題に答えるうえで必要な新しい材料や証拠を提供する機会を逸するものだった。イラクがすべてのケースについて必要な証拠を提供することが容易でないことは理解できるが、それを見つけるのは査察官の仕事ではない。イラク自身がこの仕事に正面から取り組まなければならない。
ミサイル、生物・化学兵器問題
UNMOVICのミサイル専門家と多くの加盟国の専門家は、今週検討した結果、アルサムード2ミサイル二基の射程が百五十`を超えていると一致して結論付けた。これは安保理決議六八七(一九九一年)と七一五(同)に違反している。(許可された国連の)輸出入機構の枠外で輸入され六八七決議に違反するSA2ミサイル用エンジンは、イラクがアルサムード2に使うと説明していたもので、アルサムードが違反とみなされた現在、このエンジンもそうした利用では違反となる。
イラクが一方的に廃棄したとしている炭疽(たんそ)菌、二種類のVX先駆物質の量の証明の問題では、証拠の文書やこの問題に当たったスタッフの証言が必要だと思われる。私はイラクが禁止された物質の一方的廃棄に参加した人の名簿を提出すると信じている。
イラクはまた、空の化学兵器弾頭十二個が発見されたことで設置した委員会がいかなる禁止物質も調査する権限を持つことになったと伝えてきた。
関係者の聴取
事情聴取の問題でイラクは国内外での聴取を受け入れるよう関係者に伝えるとの約束を確認した。これまでのところ、このような聴取が行われたのはバグダッドでだけである。八、九両日の会談に先立って、これまで拒否してきた三人が聴取を受け入れた。それ以上の聴取はない。われわれは第三者の立ち会いとテープ録音なしで行われる聴取が最も信頼性のあるものと考えている。
バグダッドでの最近の会談で、イラクに大量破壊兵器の禁止の法制化を要請した。今朝、われわれは、生物・化学兵器、核兵器の輸入と製造の禁止に関する大統領令が公布されたと通告された。
パウエル証言について
米国務長官が提示した機密情報は、イラクが査察に備えて施設を片付け、禁止された兵器計画の証拠を他に移していることを示唆している。われわれがよく知っている一つのケース、分析者によって弾薬庫の化学汚染の除去のためとされたトラックについてだけコメントしたい。これは申告済みの施設であり、われわれが査察に入ることをイラク側が予期していた施設の一つであることは確かだ。この施設の二つの衛星写真は数週間の期間をおいて撮影されたものである。この施設での弾薬の移動とされるものは、通常の活動かも知れないし、査察に備えて禁止された弾薬を移動したものかもしれない。この点でのわれわれの留保は、〔パウエル米国務長官の〕説明に対するわれわれの評価を減ずるものではない。
今後行う活動
昨日、UNMOVICはイラク当局に来週早々にもU2偵察飛行を開始する意向を伝えた。われわれはフランスのミラージュ機、ドイツ政府が提供する無人偵察機の使用の方式を検討する作業に入っている。夜間の偵察能力を持つアントノフ機についてのロシアからの提案を歓迎したい。これらは偵察のいっそうの強化を示唆したフランス提案に沿ったものだ。
もしイラクが一九九一年に必要な協力を行っていれば、決議六八七に基づく武装解除は短期間ですみ、十年に及ぶ制裁は避けることができただろう。決議一四四一の採択から三カ月たった今日、査察による武装解除の期間は、もしUNMOVICとIAEAにたいする「即時、積極的、かつ無条件の協力」があれば、短期間のものとなりうるだろう。
|