カウンター カウンター 2017年4月12日13:00から数えて

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NPT再検討会議 ニューヨーク行動代表団に参加して

兵庫高教組 書記長 梅林真道


.  意外にも、歴代アメリカ大統領の中で核兵器削減について最も多くを語り、ノーベル平和賞まで受賞したオバマ大統領による核軍縮は、最もささやかなものにしか過ぎない、ということはあまり知られてはいません。米議会の力関係など様々な要因が複雑に絡むのでしょうが、人類と核は共存できない、というヒロシマやナガサキが残した人類にとって貴重な教訓が、なかなか世界の共通認識とならないもどかしさを感じます。
 今回のNPT再検討会議では、前回(2010年)採択された核軍縮・不拡散のための行動計画がこの5年間でどこまで進展したかが議論されました。しかし、核保有5カ国(米英仏中ロ)は「核兵器の非人道性」については若干の留意はするものの、「核兵器禁止・廃絶のための法的枠組み」については議論すること自体を避け続けています。非同盟諸国や新アジェンダ連合などが中心になって最終文書案に核兵器を禁止する法的拘束力のある文書や枠組みの必要性を盛り込むよう要求し、ギリギリまで調整が続きましたが、核保有国は強く反発しました。
 核軍縮のためには核弾頭を削減するだけでなく、軍事および安全保障上の核兵器が持つ役割と重要性そのものを削減することが重要です。そこで、核抑止力に依存している日本のような非核兵器国が果たすべき義務がはっきりしてきています。しかし、例えばオーストリアが全てのNTP加盟国に「核兵器の禁止および廃棄に向けた効果的な諸措置を特定し、追求する」ことを求めた「オーストリア誓約」への賛同国が107カ国にまで広がっていますが、安倍首相は「いたずらに核保有国との関係に溝をつくるアプローチはとらない」と述べ、背を向けています。そればかりか、「戦争立法」の制定を国内での国会審議が始まる前からアメリカに誓約しており、「核兵器廃絶」などはただのお題目に過ぎません。

 このような情勢のもと、世界で唯一の戦争被爆国である日本、「ヒロシマ・ナガサキのある国」で私たちが出来ること、それは核兵器がいかに非人道的なものであるか、ということと合わせて、人類と核は共存できないのだ、ということを世界に向けて地道に発信し続けること、そして職場や街頭で声を広げ世論につなげていくことしかないのだと思います。私たちが提出した633万6205筆の署名を受け取ったタウス・フェルーキNPT再検討会議議長やアンゲラ・ケイン国連軍縮担当上級代表は、「署名を届けてくれたことに感謝する。とても心強い。」「核軍縮は政府だけですることではない。市民一人ひとりの行動があってこそ実現できる。」と語りました。また、潘基文国連事務総長も「これら何百万の署名は我々が服務する人々の希望と期待とを力強く想起させるものだ。彼らの原則的な努力に、私は全面的な支持を誓いたい。」とメッセージを寄せてくれています。現在の日本政府にはそのような姿勢は全くみられませんが、世界各地には私たちと連帯できる多くの市民と組織が、私たちと同じように世界から核を無くすことを願って様々な活動をしているのだと、肌で感じることが出来ました。現地に入って直接核兵器の非人道性を訴える被爆者の方(2世・3世の方や胎内被曝された方も含めて)もたくさんおられました。やはり体を張って人生をかけての訴えには説得力と迫力があります。そういう日本にしかできない活動をもっともっと広げていくことが大切なのだと思います。兵庫原水協でも「被爆組写真」をアメリカの図書館等様々な施設や団体に届ける取り組みを行い、59組を贈ることができました。
 私がこの代表団に参加するに当たって準備したものは、ニューヨーク市民と交流するための「原爆詩折り鶴」でした。自分の拙い英語を補うために、峠三吉の原爆詩「人間をかえせ」の英訳を印刷した折り紙で、“日本の文化=平和の折り鶴”を高教組の仲間や家族・友人に数百羽折ってもらいました。それを署名してくれた人へのお礼に、またはパレードをしながら沿道にいる子どもに配りました。その場では、大抵「Wow!Beautiful!Thank you.」と受け取ってくれますが、その後折り紙をひらいて詩を読んで、何かを感じてくれた人がどれ位いたのだろう…と気になるところです。
 ニューヨークの街で署名活動をしながらまず感じたことは、無視をする人がほとんどいないということです。興味がなくても「I’m sorry.」とちゃんと断ってくれます。また、署名してくれる人も必ず納得してから「O.K.」と言って署名してくれますし、説明しても納得できなければ「自分は核抑止力は必要だと思う。」等と理由を言って断る人が多かったです。私1人で署名してもらえたニューヨーク市民はたったの24人でしたが、今回日本から参加した千人以上の代表団が拡げた核廃絶への訴えは決して小さなものではなかったと思います。
 ユニオンスクエアでの大集会では、隣にいた黒人女性がさっきまで「みんなの力で世界から核を無くそう!」という呼びかけに大きな声援を送っていたと思ったら、被爆者の訴えに大粒の涙を流していたのが印象的でした。その後の、国連前までの1万人のパレードは圧巻でした。現地に集まった核廃絶への熱い思いが一つの大きなうねりとなってニューヨークの中心街を流れていきました。このうねりは、今後追いつめられた核保有国がいくら抵抗しようとも、もう後戻りすることのない世界の潮流です。
 また今年も、戦争と平和に思いをはせる夏が近づいてきました。昨年、一緒に広島世界大会に参加した青年教職員は「たくさんの若者たちが『平和な世界』を願い活動している姿を見て、一歩を踏み出す勇気を私はもらいました。」と発言してくれています。国民平和大行進や広島・長崎での世界大会を被爆70年の節目にふさわしいものに出来るように、まずは私たちの周りに、本物の平和への願い、核兵器廃絶への願いを1人ずつ広げていきましょう。







【UFT(UNITED FEDERATION TEACHERS)訪問】


 ニューヨーク行動3日目の4月28日、ニューヨークで15万人の組合員を抱える教職員組合UFTを訪問しました。1960年に誕生してからの運動の歴史や現在抱えている課題等を話していただく中で、競争の教育(over testing)が進み、教育の民営化が心配されている状況等、日本と共通する課題も幾つか話されました。情報交換の中で、日本では教室に生徒が40人いると聞いたあちらの先生が目を丸くして言った「Wow!…Good Luck…」という言葉が印象的で、改めて日本の常識は世界の非常識なんだと痛感しました。超過勤務についても「『人間らしく生きる』ことを生徒に教えるためには、私たち自身が自分の生き方を考え楽しむことが必要だし、そのための時間は大切。土・日は自分のための時間です。働き過ぎで亡くなってしまう先生がいるような社会は変えなければならない。」とおっしゃっていました。
 学校も訪問し、14、5歳の数学のクラスも見せていただきました。教師が準備に時間をかけている様子や生徒達が学ぶことを楽しんでいる様子が伺われる授業でした。教師も生徒もいろんな服装で、教師は飲み物を飲みながら、生徒達は小グループで相談をしながら、のびのびとした雰囲気で学習を進める教室の様子からは、まず形から入る傾向の強い日本との違いを感じました。 




これまでの「戦争法」成立反対の動きを別のページにまとめました。